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Photo by @KUJI_T
V3 EsportsとSengoku Gaming、果たしてどちらのソロレーナーが優れているのだろうか?
そういった議論は、最早難しくなったのではないかと思う。Pazは私の長年のお気に入りの選手だが、そんな私ですら、Pazはもう全盛期を過ぎたのではないかと思わざるを得ない。
対照的にapaMENは15分時点のゴールド差、経験値差、CS差などといった、あらゆる指標で最高クラスのトップレーナーだ。このシリーズの第1戦を除けば、apaMENは15分時点で大量のCS差をPazにつけて圧倒していた。Pireanも同様にミッドでのレーニングフェーズを支配していた。15分時点でのゴールド差と経験値差では全選手中最高であり、15分時点でのCS差では、Ariaに次ぐ2位となっている。
それにも関わらず、V3はSGに勝利した。しかも、PazとAceは対面よりもK/D/Aが高かった。これは一体なぜなのか?
もう遠回しな物言いはやめよう。BugiとArcherは良かった。かなり良かった。スタッツがすべてを物語っているわけではないが、Bugiは15分時点でのゴールド差、経験値差、CS差でジャングラーのトップに君臨しており、ArcherはYutaponと同じ水準である。
注目すべきは、BugiがLJLのファーストブラッドキングであることだ。V3 Esportsが獲得したファーストブラッドの実に78%にBugiは関与している。Bugiに近い位置にいるのは同じチームのAceであり、50%の関与率となっている。このスタッツを当然熟知しているV3は、彼らにリソースを注ぎ込むことを決断した。
もう大分前のことになるが、1チームに多くのキャリー型プレイヤーを配置してしまうと、リソースを共食いしてしまうので効果的ではないと私は指摘したことがある。
おそらく最も有名な例は、2019年のSKT T1のロスターだろう。Khan、Clid、Faker、Teddy、Mata。このチームは2019LCKサマースプリットの前半で苦戦し、誰かがサポーティブなプレイをする必要があると気がつくまで、1-5と辛酸を嘗めた。Clidはリー・シンとエリスのピックを減らし、代わりにセジュアニとトランドルをピックするようになり、SKT T1は再び勝ち始めた。
SGが苦しんでいるのは同じ理由である。誰もサポーティブなプレイをしていない。サマースプリットにおけるV3とSGのピックを比較することで、よく理解してもらえるのではないかと思う。
apaMENの最多ピックがエイトロックスであるのに対し、Pazはオーン。
Pireanがゾーイ、ツイステッド・フェイト、アジールを多くピックするのに対し、Aceはルブラン以外はガリオ、カルマ、セト。
ジャングラーは両チームとも似たようなピック傾向にある。リー・シン、ニダリー、グレイブスは、BugiもBlankも多く使用している。ちなみに、Bugiはリリアも使用している。
「いやいや、SGはYutorimoyashiがサポーティブにプレイしてるじゃん!Archerはカリスタをピックしているのに、Yutorimoyashiはジン、エズリアル、アッシュをピックしてるんだぞ?」などと言うのは、できればやめていただきたい。Yutorimoyashiのカリスタが悪いのは、レーニングフェーズが悪いからだということは、我々はよく知っているはずだ。
SGはゴールドとリソースを必要とする4体のチャンピオンを同時に投入しようとしており、そのために苦しんでいるのだ。
チャンピオンピックだけではなく、ゲームを通じて行う一般的な意思決定を含めて検証していこうと思う。今回は、この2チームが直近のシリーズで行った意思決定のいくつかをピックアップして見ていこう。
※何度も言うようだが、詳しく語ろうとすると膨大な量になるので、大まかにしか述べることができない。もっと詳しく知りたい読者は、私の本を買っていただきたい(そんなものはないが)。
まず、第1ゲームのV3によるレーンスワップは実に見事だった。ブルーサイド第5ピックのサイオンは、間違いなく準備していたものだろう。このピックはV3というチームのメンタリティを少しだけ示しているように思える。V3はBugiやArcherを活躍させてキルを取らせることに手一杯なのだから、ゲーム全体を通じてPazにできることは少ない。サイオンを使って、死んだ後にいくつかCSを取ることぐらいだ。
こうしたことは何度か起こった。
しかし、この試合で注目すべきことは、Archerにゴールドを与えるために、V3がどれだけ注力しているかということだ。トップのタワーからプレートを4枚奪った後、V3はリフトヘラルドを獲得し、Archerはボットレーンにスワップして同じことをして、結果として9枚のタワープレートからゴールドを獲得することになる。
V3はこの圧倒的なゴールド差を利用して、ゲームを順調に進めた。PazはArcherのために、ジークコンバージェンスまで買った。サイオンでソラリのロケットや騎士の誓いを買う選手もいるが、Pazは今シーズン中唯一このアイテムをサイオンで買った選手である。
第2ゲームでは、このモデルは上手く行かなかった。PazとAceの両方が、レーン戦の序盤で主導権を握れないチャンピオンをピックしたため、Bugiがやりたかったファーストブラッドの獲得を手助けすることができなかった。
これは正直ささいなことなのだが、次のクリップで起こったことを指摘しておきたいと思う。
- Rainaはウェーブが押し込まれる前にボットレーンを離れている。Rainaは自分の経験値を犠牲にしてArcherに与えている。
- ジャングルでの小競り合いのために、誰が先に動いているかに注目して欲しい。このシリーズでは数少ないことだが、PireanとapaMENが初めて反応的に動いている。
残念ながら第2試合のV3の構成は特にスケールしないし、apaMENやPireanのレーン戦の強さは、そのままSGを勝利に導くのに十分なものだった。
次の第3ゲームのクリップは、apaMENとBlankの、個人プレーを上手くやりたいという欲求が仇となってしまった例である。apaMENはかなり頑張ってウェーブの位置を自陣サイドに戻している。つまり、apaMENは他のチームメイトを助けられる立場に無いということだ。このプレー自体は別に悪いことではない。
BlankはEntyのミスにより、ボットサイドのカニのコントロールを失い、トップサイドのカニを選択している。繰り返しになるが、このプレー自体は全く問題ではない。だが、次のような影響がある。
とてもシンプルな動きに見える。Pazが自レーンのミニオンウェーブがぶつかる前に移動して得た成果だ。
しかし、だ。読者諸賢よ。これはより大きな流れの一部であったことを強調しておきたい。では、1分前に何があったのかをご覧いただこう。
このクリップで起こった、本当にささいな出来事を指摘しておきたい。
- 第2試合と同様に、PazとAceはタワーに押し込まれたため移動する余裕が無かった。
- だがPazは、自分のレーンがひどい状況になる可能性があったのに、レーンを離れた。
- このままだとウェーブはapaMENの方に押してしまい、再びコントロールを取るのに苦しむことになってしまう。
- この少数戦でキルを獲得できる確率は非常に低かった。
- PazはBugiをインベードから守る場所にワードしたが、自分へのガンクを発見する可能性は低い場所のワードだった。
- 前述したように、ウェーブはapaMENに向かってプッシュするので、これは特に危険なことである。
これは何を意味するのだろうか。PazはBugiの良さを知っているからこそ、犠牲を払うことを厭わなかったのだ。Pazはリソースを失うだけではなく、Bugiのチャンスのために、自分のリソースを手放すことを選択しているのだ。
Pazは、数分後に再び似たようなプレイスタイルを見せる。
このようなプレーをしないチームもいるだろう。巨大なウェーブがぶつかっているので、BugiのプレッシャーによりYutorimoyashiとEntyをタワーから遠ざけてゴールド獲得と経験値獲得を阻害し、タワープレートを1~2枚とって満足するチームもいるだろう。
しかし、Paz、そしてV3はそうではない。PazはArcherとBugiの最大の勝利をお膳立てするために、自分のウェーブコントロールを犠牲にしてテレポートを選択したのだ。
さらに、Pazはレーンに戻った直後、またしても自身のウェーブコントロールを犠牲にした!しかも、今度はアシストすら獲得できなかった。
そして、またしてもBugiにキルを与えることを選択。ジャングラーを育てるため、意識的にこの選択を行っている。
しかし、こうしたプレイスタイルは、Rainaが文字通りパンチを繰り出した時に見られるように、落とし穴がないわけではないのだ。
第3試合の残りは、V3がゴールド差を拡げる一方、SGがますます必死になって追いつこうとする展開だった。
正直に言うと、第4ゲームではこのV3のスタイルはあまり強調されていない。V3はLoLでは見られない、オーバーウォッチを彷彿とさせる独特なスタイルを見せてくれたが、それについてはまた別の機会に触れよう。
結局のところ、V3がLJL最高クラスの選手を揃えているかどうかを論じるのは未だに難しい。V3が勝っているのは、一握りの選手にリソースを投入するという素晴らしいチームワークの賜物なのだ。
我らが無私無欲の英雄Pazが、再び世界の舞台で日本を代表する日が近づいているのかも知れない。
※原題のMartyrは、直訳すると殉教者と言う意味。Joushiによると、Paz選手は信念のために己の命を捨てることすら厭わない真のチームプレイヤーであるという意味とのこと。
LJLの次節、Playoffs Round 3は9月5日(土)17:00 でござる。
コメント
Sg見てるか?こういうことやぞ
DFM戦までに修正してこいよ
ドラフトについては特に論じてないのね。
SGのBanが相手のやりたいことに全く枷を掛けてなかったのも多分に影響してる
こういうのってコーチの差なのか?
日本のシーンに注目してくれる外国の方がいるのはほんとに嬉しいね
オーバーウォッチを彷彿とさせる独特なスタイルを見せてくれたが、それについてはまた別の機会に触れよう。
クッソ楽しみ。クッソ楽しみ
めっちゃ面白い
レベル低いリーグの分析っておもしろいのか?
この人も変わった人だな
V3のチームプレー感わかる
エースがサポーティブなチャンプ使った時の方が手強いよな
LCSのレビュー書いても誰も読んでくれないんだろう
日本人は西洋人の意見大好きだからな
>ArcherはYutaponと同じ水準である。
KRがJPと同じだ!って書かれてるのに凄いと思わされるのはYutaponくらいか
なるほどなあ
確かに昔からpazは献身的な動きが多いと思ってたけど結構影響は大きいんだね
面白い
VediusとかもそうだけどLJLにはたまに贔屓にしてくれる人が居るね
ありがたいことだ
V3はbugiさえいなければ素直な気持ちで応援できるんだけどな……。
Bugiがなにかやったん?
お願いKRキャリーってスタイル面白くないんだよなあ
だからちゃんとyutaponがキャリーするDFM好きなんだけど
この人たまに英語でLJL実況してる人だよね
Napもだけど他ロールの為に犠牲になってもちゃんと集団戦のフェーズにはカムバックしてるのが凄い
>SGはゴールドとリソースを必要とする4体のチャンピオンを同時に投入しようとしており、そのために苦しんでいるのだ。
ここほえ~なるほどポイント
お願いKRをちゃんと形にして上手く活かしきったのがV3
せっかくKRjgmidあってApamenも全盛期迎えてると言っていいようなシーズンでWinレーン作れることが多いのに、アクションがチームとして曖昧で活かしきれなかったSGって話
お願いKRがリージョンとして好ましくないのはわからなくもないけど
それ以上にチームプレイ不全起こしてたりJPが足引っ張るチームはつまらんだろ
ソロQじゃなくてプロシーン見てるんだからさ
お願いJPできる選手育てろとしかいいようがないよなお願いKRいやっても
KRチャレの日本人5人まずは集めてくれ育ててくれと
cerosもそうだけど他レーンに信頼できるキャリーがいるならリソースを渡すのも選択の一つなんだよな
ごめん。どうせ続きはないだろうから聞くけど
V3はLoLでは見られない、オーバーウォッチを彷彿とさせる独特なスタイル
これってどれの事を言っているんだろう。OWやった事ある人教えて
お願いKRはV3ならBugi、SGならBlank崩せば瓦解するから対策されやすいんだよな
お願いAriaのCGAもAriaをタワー下に押し付けて動かせなくしただけでボロボロになったし
V3とSGはもう1回BO5やったらまた違った結果になりそう
やはりV3を支えるのはPazママだったんでござるなぁ
・Yutorimoyashiのカリスタが悪いのは、レーニングフェーズが悪いからだということ は、我々はよく知っているはずだ
・無私無欲の英雄Paz
いいこと言うわ・・
じゃあcerosがガリオやカルマやルル辺りのサポーティブなミッドをやればDFM最強なのでは?topjgmid3人でbotの足引っ張ってるもんな
>>9
日本人は西洋人の意見大好きなのではなく、外国人の意見が大好きなんや。
TVでも、日本に来た外国人に何故来たのか聞いたり、日本で有名な食べ物とかを外国人に食べさせて反応を見たりする番組が多いやろ。
まあアメリカ人が分析するって謳い文句にそんな印象は確かに受けるけど
実際問題LOLに関してはNAすら天上人だからね
KR?アナリストじゃなく一般プレイヤーの圧でも死んじゃうよ
5年くらい前からいるよなLJL界隈にいるよなjoushiさん
redditにも投稿してたしLJL finalの英語解説もやってたしよほどLJLが好きなんだな
この人って一時期NAのアカデミーリーグの解説とかやってた人?
それはZerost解説記事の方だっけ
いやーいつもありがたいでござるな
lol忍者はきちんと記事をもらってきたり企画を作ってるから信頼感が高い
日本人だろうがなかろうがLJLをここまで真面目に分析してる記事が他に無いから毎回読んでて非常に面白いでござる
しれっともやしがサポーティブとかディスられてんのじわるw
選手の能力はそんなに変わらないように見えるのになぜ差がつくのか不思議だったけど納得した