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ビデオゲームで大金を稼ぐために、彼らはアメリカに群がる
アメリカのリーグ・オブ・レジェンドのチームは、アジアの競争相手に遅れをとっているため、高額なギャランティーを提示して世界最高クラスの選手を採用している。
世界選手権トーナメントの準決勝において、チームを逆転勝利に導いたスター選手が偉業を成し遂げたとき、クリムゾンライトは光り、キャスターたちは衝撃の叫び声をあげた。
舞台は上海。そこでビデオゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』の世界大会が行われた。選手たちが熱狂的にマウスクリックする姿を、多くの観客たちが、伝統的なスポーツと同等の重厚感を伴いながら見守っていた。
その中心にいたのは、台湾のスーパースターである胡碩傑(Hu Shuo-Chieh)。彼は決勝戦で破れてしまったものの、さらに世界を驚かせるアクションに出た。昨年11月、ゲーム業界ではSwordArtとして知られる胡碩傑は、世界的なeスポーツの中心地である中国を離れ、リーグ・オブ・レジェンドの競技シーンとしては僻地であるアメリカに移籍することを発表したのだ。
アメリカは世界的なスポーツの覇権を握ることには慣れている。だが、プロ選手たちがプレイする、注目度の高いビデオゲームである『リーグ・オブ・レジェンド』においては、eスポーツが生活の一部となっているアジアのチームに大きく遅れを取っている。中国や韓国では、ゲーマーたちは子供の頃から競技シーンに参入し、プロ選手たちは1日に最大18時間ものトレーニングを行っているのだ。
アジアに追いつくため、アメリカのチームは、メジャーリーグサッカーがヨーロッパの有名サッカー選手をアメリカに誘致するのと同じように、LoLのスーパースターたちにどんどん高額な給料をつぎ込んでいる。ニューヨーク・タイムズの分析によると、これらのチームは2016年より、アジアから少なくとも40人、ヨーロッパからもほぼ同数の選手を獲得している。
多くのプロゲーマーは、アメリカに単に高額のギャラを求めているだけであり、アメリカは全盛期を過ぎたプレイヤーのための年金コミュニティのようなものだという認識が強まっている。また、ロサンゼルスのような風光明媚な場所での快適なライフスタイルに憧れる選手もいる。あるいは、アメリカを始めて世界大会で優勝させるためにアメリカに来たと主張する選手もいる。
「彼らは地域全体のヒーローになれるんです」。LCSのコミッショナーであるChris Greeleyは、次のように述べた。「彼らはステージの上でトロフィーを掲げ、それを渇望している地域に届けることができるんです」。
北米のチームであるTeam SoloMidと、2年間で600万ドル(約6億2800万円)という記録的な契約を結んだ胡氏は、冒険心からアメリカに惹きつけられたという。
「僕は成長のない日々が好きではないんです。常に自分自身に挑戦したいと思っています」と、胡氏(24歳)はインタビューでこう応えた。
リーグ・オブ・レジェンド、オーバーウォッチ、コール・オブ・デューティーなどのプロリーグでは、伝統的なスポーツと何ら変わりがなく、チーム同士が優勝トロフィーを求めて競い合い、栄光を求める億万長者の選手たちがしのぎを削り、熱狂的なファンたちがチームのジャージを買う。
リーグ・オブ・レジェンドの競技は5対5で行われ、選手たちはカラフルなジャングルの中で自らの分身を操り、幻想的なモンスターを倒したり、敵の拠点を破壊するためにコンマ数秒を争うために、知能とマウスクリックの速度を競い合う。国際大会は2011年から始まり、中国のインターネット大手テンセントが所有するRiot Gamesが運営している。
ゲーム業界の分析データを提供するNewzooによると、2015年には北米で3,820万人が少なくともひとつのeスポーツイベントを観戦していた。2020年には、その数は5,720万人へと跳ね上がった。
Riotが2009年にリリースしたチーム制ゲームであるリーグ・オブ・レジェンドは、視聴率において競合を凌駕している。10月に開催された世界選手権イベントでは、4,600万人近くが、少なくとも一部を視聴した。
リーグ・オブ・レジェンドの市場がアメリカで成長しているにも関わらず、北米のチームはアジアのチームに未だに負け続けている。これまでの10回の世界大会のうち9回は、中国、台湾、韓国のチームが優勝している。
「僕が本当に若い頃、トップクラスのプロ選手のことを尊敬していました。いつか、彼らと同じようになりたい、そう思っていました」。CoreJJとして知られるリーグ・オブ・レジェンドのプロ選手、조용인(Jo Yong-in、26歳)はそう語った。
華道面(島部)で育った頃は「ゲーム以外に何もすることがなかった」と語るJo氏は、2019年にロサンゼルスに移住し、現在はTeam Liquidの一員として北米リーグに参戦している。
コミュニケーションが最も重要なスポーツにおいて、最もカリスマ性を備え、指導力のあるリーダーの一人と考えられている胡氏は、自身とチームメイトのために設定した高い基準を維持することが、アメリカでの成功の鍵となるだろうと語った。胡氏は昨年所属していたSuningでは、チームメイトと一緒にしばしば正午から午前5時まで練習したという。
「僕は言いたいことを言わないタイプではありません」と胡氏は言った。「単なる仲良しチームが、強くならないことだってあります。ぶつかり合って、たくさん話して…そうすればチームは良くなります」。
しかし、アメリカのチームが世界的な評価を得るまでは、選手の輸入が成功につながるかどうかについては疑問が残るだろう。Riot Gamesは、アメリカの育成リーグを拡大したり、輸入選手の上限を厳格化することで、自国の才能を育てようとしてきた。それでも、2013年に大会が始まって以来、LCSにはアジア、デンマーク、スペインなどからスター選手たちが移籍してきている。
「同じような志を持ってアメリカに来ても、何の役にも立てなかった選手もいます」と、元ESPNの貴社で、Dot EsportsのライターであるJacob Wolfは述べた。外国人スター選手の中には、環境に馴染むのに苦労したり、乗り越えられないほどの言語の壁にぶつかったり、ホームシックのために契約が切れる前にアメリカを去る選手もいるそうだ。
それでも、海外からの選手はアメリカで特典を享受していると、選手たちは述べた。風光明媚な多文化共生のロサンゼルスに暮らし、TSMのような最先端の施設で練習することができる。1300万ドル(約13億6100万円)を投じて建設された広さ25,000平方フィート(約2322平方メートル)の洗練されたトレーニング施設では、NBAチームと同じシェフや理学療法士のサービスを受けることができる。
さらに、北米では給与が伸びている。Greeley氏によると、スターティングロスターの5人の選手の平均給与は2018年以降、30万ドル(約3140万円)から46万ドル(約4815万円)に上昇しているという。Wolf氏によると、アメリカで最も高給取りの選手は、韓国のような強豪国のエリート選手よりも、50万ドル(約5234万円)も多く稼いでいる可能性があると言う。
LCSに参加する10チームのうち、その多くは伝統的なスポーツチームも所有している億万長者によって支えられている。しかし、まだこのスポーツは金のなる木にはなっていない。リーグ・オブ・レジェンドに参加するために、チームはRiot Gamesに1000万ドル〜1300万ドル(約104億円〜136億円)を支払わなければならなかった。
Riot Gamesはリーグ・オブ・レジェンドでどれだけの収益をあげたかについてのコメントを控えており、アナリストはeスポーツから直接的に利益を得ているとは考えていないとしている。しかし、調査会社のSuperDataは、ゲーム自体で昨年18億ドル(約1884億円)以上の収益をもたらしたと推定している。
試合が行われるロサンゼルス西部のRiot本社から数ブロック先にはソウテル大通りがあり、eスポーツ界のスーパースターたちがラーメン屋などを頻繁に訪れている。韓国から来た選手は、故郷を思い出させる食べ物を見つけられるコリアンタウンで週末を過ごすことが多いと、eスポーツ移民弁護士の Genie Doi氏は述べた。
アメリカでのワークライフバランスは、1日18時間の練習に耐えきれず、手首の故障に疲れている選手にとってはもうひとつの魅力であると、Team Liquidのコーチ兼ゼネラルマネージャーを務めてきた강준혁(Kang Jun-hyeok)氏は語った。韓国と中国は近年進歩を遂げているが、Kang氏(31歳)によると、その文化は「崩壊するまでハードに働き続ける」ものだという。
北米のチームは、他のチームを出し抜いてフリーエージェントを獲得するため、こうした利点を海外選手たちに売り込んでいる。選手が契約を結ぶことを決めると、Doi氏はチームがビザを獲得するのを支援する。ビザは普通、変わった職業にもかかわらず付与されたとDoi氏は述べた。
Doi氏はさらに、多くの国際的スター選手のアメリカへの到着は、アメリカ大陸への移民の歴史と完全に一致しているとも述べた。
「グローバルな文化のるつぼに、北米のeスポーツはぴったりとフィットしている」とDoi氏は言った。「そうした要因が、最終的に北米の競争力を高めることになるだろう」。
Summoner1
平均給与が約4815万円ってマジかよ。パフォーマンスが出せなければギャラは保証されないから理にかなっているとは思うが、それにしてもすごい金額だよな。
>>Summoner1
Summoner2
平均は一部のプレイヤーがおもっくそ引き上げてそうだけどな。
>>Summoner2
Summoner3
だな、この場合中央値のほうが妥当性があると思う。PerkzとかTLみたいな例もあるし。
TSM
記事自体はとても良く書けていると思うが、伝統的なニュースメディアが常に持ち続けているeスポーツに対する姿勢には本当に参るよな。
記事のタイトルを見てみろよ。
「ビデオゲームで大金を稼ぐために、彼らはアメリカに群がる」
20年経った今でも、メディアはこの姿勢から抜け出せてないんだ。「 ゲームでお金をもらえるだって? なんだそりゃけしからん!」って、こりゃもう古臭いお決まりのセリフだよ。
ニュースとしての妥当性を維持しようとするなら、こういうことを理解していない人たちは、もう読者のデフォルトじゃないんだと認識しなくちゃいけないと思う。
eスポーツのライフサイクルの現時点では、従来の伝統的メディアが「eスポーツはZ世代の奇妙で儚い異常な存在で、見下す必要がある」というポーズをとっても全然意味がないよ。
>>TSM
Summoner4
レガシーメディアはまだベビーブーマー中心のメディアだからな。彼らの読者のほとんどは、iPhoneよりも挑戦的なテクノロジーを扱う必要はない。ニューヨークタイムズの読者のほとんどは、eスポーツはおろか、伝統的なスポーツすら熱心に追いかけてないだろう。
翻訳元: CoreJJ and SwordArt Featured in New York Times
あたたかそうでござる。
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コメント
ビデオゲームで大金を稼ぐために、彼らはアメリカに群がるって・・・
アリじゃないんだからさ・・・
アメリカも日本と変わらずイースポーツに対する冷たい目って結構あるんだね。
“リーグ・オブ・レジェンドの競技シーンとしては僻地であるアメリカに移籍することを発表したのだ。”
僻地で笑ってしまった。火の玉ストレート。
ニューヨークタイムズがただの三流ゴシップ紙だと知ったときは驚いた
NYT(笑)
いいソースだな
いつも不思議に思うんだけど、選手にこういう桁外れの契約金出してるチームやスポンサー側ってそれを上回る利益が出せてるの?
給料高すぎやろw
LCL,LPLさんもうちょい払ってやりなよ
LPLの給料はこんなもんじゃないよ
1番年俸貰っているのって誰なんだろうな
莫大な年俸貰っていそうだけど、確たるソースってそんなに出てこないよね
IGとかFPXやばいぞ
大企業って一日に数百億稼いでるんやで
ビデオゲームで大金を稼ぐために、彼らはアメリカに群がる
このタイトルでcoreJJみたいなNAでも本気でWCS優勝を目指すプレイヤー紹介するのはなんか違う
HuniとかEikaみたいな7桁貰ってステージ上でクソみたいなパフォーマンスするプレイヤーだったらいい風刺記事になると思う。
CoreJJ大好き尊敬してる
まあニューヨークタイムズだからな
supが注目されるとなんか嬉しい
見出しはアレだけど記事の内容はLCSとはどういうリーグで選手が何を求めて来るか書いているいい記事だと思う
本気でNAを優勝させるために来た選手と名声を年金に変換するために来た選手と故郷が消えても戦い続けるために来た選手が混在するのがLCSだ
>ゲーム業界の分析データを提供するNewzooによると
このサイトを知れただけでこの記事読んだ価値があった
チームはRiot Gamesに1000万ドル〜1300万ドル(約104億円〜136億円)
約10億4千万円~13億6千万円の間違いなのか
1億ドル~1.3億ドルの間違いなのかどっちだろう
「ビデオゲームで大金を稼ぐために、彼らはアメリカに群がる」
アメリカですらこれなのか
日本も風当りマシになってきたとはいえまだまだだよな
スマホゲームポチポチしてる世代が親になってきたけどEスポーツはスポーツ(競技)として認められてないのが残念だ
スポーツ=体を動かすって考えが根強いからなぁ 頭の固い人達が淘汰されるまでまだ相当かかるだろう
体動かさなきゃだめって言うのなら将棋や囲碁もアウトだと思うのだけれど…
ゲームっていう分野がまだ生まれたばっかだからしゃあないよ、囲碁、将棋、チェスなんかは昔からあった訳だし。
将棋指しも戦後はろくでなし呼ばわりされてた。普及活動を先人が頑張ってきた結果が今
eスポーツはまだ歴史が浅すぎる、今の世代がどうプロモーションしていくかじゃね?
タイトルしか読んでないのか?
東洋経済オンラインなんかでよく見る、筆者はマトモなこと書いてるのに、
編集部が扇情的なタイトル付けたパターンだろう。
本文は、LCSの給料高騰や、eスポーツにおけるグローバリゼーションを分析している。
海外のプロゲーマーにとって、アメリカの市場が魅力的だという指摘にすぎない。
要するに、ニューヨーク・タイムズはスポーツ競技として見ている。
だからプロスポーツの文脈で分析している。