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リーグ・オブ・レジェンドが面白さを維持し、より多くの人々をもっと楽しませるためにはどうすればいいのだろうか?
リーグ・オブ・レジェンドは2009年にリリースされて以来、多くのアップデートで形を変え続けてきた。
乱暴な言い方をするが、理想的なアップデートとは、既存のシステムとの整合性・バランスを維持したままプレイヤーに新たな体験の場を与えることだ。プレイヤーがLoLをプレイする大きな理由は、純粋に勝負事を楽しんでいるからと、チャンピオンごとに膨大な知識を頭に詰め込み、学習と実践を繰り返す事が好きだからだと私は思う。
同じものや違いの少ないものを2個、3個作るだけではプレイヤーは満足しない。とはいえ、全く新しい体験ができるからと言って、均衡を破壊するようなチャンピオンを作っても、楽しいのは最初だけですぐに退屈になってしまう。
例えばマルファイトとスキルセットがほとんど変わらないマルファイトのクローンが2021年にリリースされたとしよう。マルファイトがいるからそんなものプレイするに値しない。前述の通りプレイヤーは今までの人生にはなかった新たな体験を求めている。
Eのプチリワーク前のユーミは、逸脱性が強すぎた分かりやすい例だ。自身をずっと攻撃不可にして、味方をヒールし続けるペット系チャンピオン。確かに斬新なアイデアで使っていて楽しい。しかしたとえ勝率が50%だとしてもサモナーズリフトのバランスから大きく外れている。程度の問題だが、数値がインフレしていたり、余りに納得感のないデザインを実装してしまうと、そのチャンピオン一つで、リーグ・オブ・レジェンドというゲーム全体への不信感と繋がってしまう。新しいチャンピオンを作るのは非常にセンスが問われる仕事なのだ。
この記事ではリーグ・オブ・レジェンドの品質を維持し向上させ続けてきたプロフェッショナル達を紹介していこうと思う。チャンピオンデザイナー達の素晴らしい活躍ぶりを知っていただけたら嬉しい。
August
主な作品
August氏は大学を卒業して直ぐにRiotに入社した。大学生時代に彼はDotAとLoLに多くの時間を費やしており、彼が素晴らしいチャンピオンを安定していくつも生み出せるのは、きっとその経験が生きているからだろう。
ジン
マークスマンとは雑に言えば、長射程のオートアタックで戦い、ダメージを出すためには比較的多くのゴールドを必要とするチャンピオン達の事だ。必然的に共通点の多くなってしまうマークスマン達の中で、August氏はジンにひと際目立つ「個性」を与えることに成功した。
ジンはたった4発までしか連続で攻撃出来ず、撃ち切ればオートアタック不可のリロードに入ってしまう。
4発目に大ダメージと移動速度のバフを得られる代わりに、プレイヤーは常に残弾数を考慮していなければならない。
この制約はbotレーンにいる4人全員に緊張感を与え続ける。ジンのいるチームはリロードのタイミングとダメージトレードをずらし、対面にジンがいるのならリロード中の無防備な状態を狙って戦えばいい。
August氏が生み出してきたチャンピオン達は必ず新しいメカニクスを持っていて、なおかつその場にいる全員が新たなメカニクスに対して臨機応変に対応できる。使っている本人も周囲の人間も楽しめ、新たな体験の楽しさとゲームバランスを両立できる。それが彼の魅力だろう。
CertainlyT
代表作
CertainlyTはチャンピオンデザイナーになる以前は、ゲームとは全く関係のない仕事をしていた。
CertainlyT氏が作るものはAugust氏とは対照的で、使っている本人に戦闘の主導権を握らせているため、カウンタープレイの余地が非常に狭い。
彼の創造したチャンピオンたちは大量の学習プロセスが必要不可欠(好意的に捉えるなら無限に遊べる)で、その膨大な学びを自分だけではなく周囲の人間にも強要させる。プレイヤー達はCertainlyTが居なければ知ることのできなかった斬新なメカニクスで、苦痛と快感を存分に味わうことに成る。
新たな要素に対してプレイヤーは創意工夫を凝らし胸を躍らせるが、従来のサモナーズリフトの常識を壊してしまうのだ。
ヤスオ
ヤスオはCertanlyTの「学習強要」という哲学だけで成り立っているチャンピオンの一体であり、勝率が50%でも他のチャンピオンと比較してバランスが取れていないと感じるのはそのせいだ。
というのも、ヤスオはメレーチャンピオンなのに防御面が劣悪という矛盾を抱えていて、そこを補うかのように異常な火力と0.1秒ごとのブリンクを持つ。
ヤスオは持ち前の火力と追撃性能で敵を壊滅させるか、偏ったスキルセットのせいで劣勢時のリカバリーができず0/10/0になるかの二択しか存在しない。また、試合の勝敗は全てヤスオの育ち具合に左右されているため、一緒に試合をすると不快感と不平等さを感じるのは当然だ。
ヤスオはLoL史上最悪のチャンピオンであり、消えて欲しい、と多くのプレイヤーが考えているだろう。ヤスオを使っている本人を除いて。
You’ve heard me constantly mention sample and getting adequate data. Here’s why that’s important: even looking at data from ALL time and across ALL elos, some champions just don’t have the sample at higher # of games. How many players have exactly 389 Ivern games?? (not many). pic.twitter.com/kCu85lp6tj
— blaustoise (@blaustoise) December 19, 2018
ヤスオは非常に急な習熟度曲線を持っていて、約100試合以上をこなしたプレイヤーだけの勝率が50%を超える。(注: 上記一番右のグラフがヤスオの習熟度曲線)
初心者のヤスオはあり得ないほど貧弱で、逆に熟練したヤスオは高いキャリー性能を使って暴走する。高いスキルキャップは時間と労力をつぎ込むに値し、ヤスオプレイヤー自身が成長していくことを実感した時には有頂天になるだろう。その学習と成長の過程こそがCertainlyTの伝えたかったものなのだろう。
悲しいことに現在CertainlyT氏はチャンピオンデザインから異動してしまった。私は彼の創造性を活かした作品をまた見れる日を楽しみにしている。
Stashu
代表作
彼のチャンピオンデザインは実験的だ。CertainlyT氏はより難しいものを作り、Stashu氏は今までに無かった斬新なものを作る。実験的な新メカニクスはプレイヤーのためというよりも、同じデザイナーたちにこういうやり方もあるんだぞ、とLoLを新たな地平へ導く道標を示しているようにも感じる。
アフェリオス
独自のインターフェイス、5種類の武器。武器には使用制限があり、状況と組み合わせ次第で強さが大きく変動する。Stashu氏とCertanlyT氏の前衛的な二人が協力したら意味不明な怪物が出来上がってしまった。
アフェリオスはダメージをオートアタックとQに依存しているせいで「とりあえずスキル撃てばダメージは出る」という安定性に欠き、ポジショニングの精度等でダメージ効率が大きく左右する。
シーズン10のアフェリオスでこんなことがあった。
ミラーチャクラムが10個以上スタックした状態で戦闘に臨めることは稀だが、その分爆発力はすさまじい。まさにアフェリオスの不安定さを象徴する場面で、最高のコンディションならばアフェリオスはサモナーズリフトの誰よりも強くなる。しかし最低な状況なら、メカニクスでねじ伏せる以外自衛手段を持たないため簡単にキルされる。
アフェリオスは他チャンピオンと一線を画す別次元のチャンピオンだ。多くのマークスマンは目立った問題を抱えることなく、安定したスキルセットで安全なプレイが可能だ。エズリアルはアーケインシフトで危険地帯を容易に脱出し、アッシュは敵にスローとスタンを付与できる。たとえブリンクやハードCCを持っていないチャンピオンも、移動速度をバフさせたり自身を対象指定不可にて危機を乗り越えることができる。アフェリオスもそういったスキルを持ってはいるが、武器キューシステムのせいで不安定だ。
また、アフェリオスはどの武器を使うか状況に応じて消費し適切な武器に切り替える必要があるため、使っている本人と、アフェリオスの意図を事前に察知しないといけない周囲の人間は、常に頭を悩まされるだろう。
「アフェリオスは難しそうだからやめよう」と敬遠してしまうのはもったいない。なぜならリーグ・オブ・レジェンドで最も楽しく、有意義な時間は敵のネクサスを割る瞬間ではなく新しい物事に対して試行錯誤を繰り返す時だと思うからだ。その壁が高ければ高いほど、少なくとも私は気持ちが高ぶり努力する。Stashu氏とCertainlyT氏はその壁をより高く作り、独自のインターフェースを導入することでリーグ・オブ・レジェンドに慣れたプレイヤーに対しても新しい刺激を与えることに成功した。
ZenonTheStoic
代表作
ZenonTheStoic氏は実践的で新しいメカニクスを作ることに長けている。それのメインターゲットは一般プレイヤーというよりは、プロプレイヤーや高レート帯。そのためプロリーグを基準にして一般プレイヤーを無視したナーフがたびたび行われた。特にアジールやサポートのタム・ケンチは扱いこなせるのならば頭が一つ飛びぬけて強く、プロの試合のように緊密な連携が有ると化けることが多く、大幅なナーフを受けることになってしまった。
アジール
※英WikiではZenonTheStoicはアジールのオリジナルデザイナーとして、さらにはプロジェクトリーダーとしても記載されている。Wav3break氏の名前も同様に記載されている。
アジールは兵士というメカニクスを基本に戦うメイジマークスマンという、唯一無二の存在だ。彼のオートアタックはWで事前に召喚した兵士が行うことが可能で、非常に長いレンジと高いDPSを持つのが特徴。
兵士のオートアタックはチャンピオンと比較して、アニメーションキャンセルまでの時間がとても短い。非常に滑らかなカイトができる反面、長いレンジと、条件によっては中盤から2.0を超える攻撃速度が機械の様なハンドスキルを要求する。オートアタック一つをとってもこのチャンピオンは練習が必要だ。
ZenonTheStoic氏は自身のチャンピオンたちに壁を無視した長距離ブリンクを持たせることが多い。それはアジールにおいても例外ではなかった。
アジールはEで兵士の位置へ一直線にブリンクでき、ブリンク中にQで兵士を移動させれば距離が更に伸びる。最大レンジのブリンクはスキルを最低でも2つ使うので無防備な体を晒すことにもなりかねないが、その代わり、壁を1つも2つも無視して進むリーグ・オブ・レジェンドで最強の移動が出来るのだ。シュリーマシャッフルで有名なE⇒Q⇒Rのコンボはプロでさえも回避不能。危険地帯からの脱出と絶対に捕まえる追撃、どちらもできることがプロが好んで使う理由だろう。
アジールは火力、射程、機動力、ピールなんでも出来てしまう万能チャンピオンで微塵も不公平さを感じない。シンプルなスキルセットなのに使い手によって強さが大きく左右し、他のどのチャンピオンよりも深い。アジールは芸術そのものだ。
終わりに
リーグオブレジェンドに何千時間も費やせるほど熱中できるのは彼らのようなRioter達が、絶えず新しい体験を提供し続けてくれるからだ。
全てのチャンピオンデザイナーを把握していれば、サモナーズリフトでよく見かけるチャンピオン達から規則性を見出したり、試合のCertainlyT製のチャンピオン率の異常な高さに笑ったり、新しい楽しみ方ができると思う。(英Wikiの各チャンピオンページ。DEVELOPMENTのgameplayからチャンピオンデザイナーを調べられる。)
リリースされたばかりのヴィエゴの担当はAugust氏だから、良い仕上がりになっているのではないかと期待している。August氏のチャンピオンは、使っている時よりも、対面している時が特に好きだ。
今回紹介できなかった人たちも含めて、リーグ・オブ・レジェンドの開発スタッフには頭が上がらない。リーグ・オブ・レジェンドは最高だ!
では、最後まで読んでくれてありがとう。
著者: Jim
超頑張っているでござる。
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コメント
C e r o s
吉田恭平
みんなどこへ行った~見送られることも無く
CT帰ってきて…
デザイナーに韓国人を入れよう
じゃないとそのスキルセットでどれくらいの事が出来るかわかってない
リリース時点でRiotが思ってる10倍多彩なことができるよ
レル「本当にそうかな?」
お前こそLCKでのみ使われてるやんけ
それで使い方が知れ渡って勝率爆上がりしたけども
>シュリーマシャッフルで有名なE⇒Q⇒Rのコンボはプロでさえも回避不能
え・・?E→QでRの射程内まで移動する間に時間の猶予はクッソあると思うが
回避不能ってグラガスのE→フラッシュみたいなのを言うんじゃないの
使ってる側からはそう見えるけど使われる側からしたら急に目の前に兵士とアジールが飛んでくるからかなり難しい
基本的に視界外から飛んでくるのも難易度上げてる
実際プロシーンでもめちゃくちゃ引っかかってるじゃん
反応できることと回避できることはまた別なんだよ
絶対来るとわかっていても長いブリンク距離と優秀な範囲を回避するのは難しいわけ
画像が四大凶悪犯みたいで草
Tさん、チャンピオン作るのヘタだねw
きみはCertainlyTの試練を乗り越えられなかったんだな……
ZenonTheStoicの作るチャンピオンどいつもこいつもクソカッコいいな
アジールよりカッコいいチャンピオンとか2度と出ないだろ
ケインが出ただろ?
ん?
Tの代表チャンプだけアウトレイジなんだよね
Augustくんはかっこいい上にそれなりの強さのキャラ作っててええね
有能of有能
T叩いとけば間違いないみたいな風潮あるけどStashuが地味にヤバい
極端なチャンピオンばっかり作ってる
augustくんはリメイクで暴走しがち
アジールが1番好きかも
Tのヤスオのおかげで相当アクティブプレイヤー増えただろうな。商業的には最も成功したチャンピオンな気がする。
Tさんのチャンピオンは全部バンされてても違和感ない…
august氏はいいチャンプ作るね。でもヴィエゴはどうだろ・・ aram民でも別に他のチャンプのスキル使いたいとか思わんし、バグだらけの誰得チャンプになりそう。
とても良いまとめ記事だね
他のクリエイターのことについてももっと知りたい
受け継がれる T の意思
個人的にいいデザインだなと思うのはセト、ヌヌ、エイトロ、リリア、ランブル
直感的に分かりやすく、複雑なメカニクスを必要としないのに独特な操作体験を提供している
特にエイトロは良い
派手なモーションで大きな武器を叩き付けるQは武器の化身であるダーキンのメインスキルにふさわしいし、他の2つのスキルがQを生かすためにデザインされているのも統一感があって最高
いつか使いこなしてみたいチャンピオンの一人だ
スレッシュとアリスターは洗練されてるなーていつも思う
スワインなんだよね
これは良い記事だ。海外のレディットにも貼られるべきだね
LoLが初心者お断りになったのはわからん殺しするチャンピオンが増えた頃からなんだよね
古参にとっては面白い要素なんだが新規がすぐやめるのは残当
初心者にとってはどんなチャンピオンのどんなスキルも訳わからないということに気がついて
最近LoL始めたんだけどキャラが多すぎて何が何だかわからん
対戦前にいちいち調べる事も多い
そこがちょっと敷居高い一面あるよね
でもその壁超えたら無限に面白くなる
T帰ってこい
結局選ばれる側が正義なんだって教えてくれよ
ヤスオダリウススレッシュアカリ…Tが担当したチャンプのピック率の高さよ
やはりTは最高のクリエイター
スレッシュくんだけBANされない聖人チャンプ
他は不快度モリアゲmax
ワーウィックはいいでしょ?
自分自身が不快感MAXチャンプ擦ってる奴等からしたらT作のオナチャンは至高の名作だわな(笑)
Tが外されて本当に良かったわ。二度と帰ってくんなよ。
こすってるやつが多数派なんだわ
>ヤスオはメレーチャンピオンなのに防御面が劣悪という矛盾を抱えていて
は?シールドもバリアも備えてんだろ。頭ソリアゲドンかよ
しかもヤスオはmidやbotでメイジやadcを相手にすることが多い
ヤスオ嫌いって思うプレイヤーの大半は、防御面がヤスオより劣悪なチャンピオン使いだからね
脆いのがヤスオの弱点だって言われても心理的には全く納得できんよね
風の壁がインチキ!って言い続けるうちにヤスオ自体が無敵だと勘違いし始めるヤスオにわか多すぎ
0/10/0になってこい
ジン最高
革新的なチャンプだったね
ジンはコンセプトに合ってる
ヨネを作ったのは誰だい?
このチャンプも使ってて最高に楽しいよ
ザヤラカン作った人だよ
lolのチャンプってほんと良く出来てると改めて思ったわ。かれこれ5年やってるけど、改めて考えると使っててガチでクソつまんなと思ったの二体だけだし。
ワイリフで改めて様々な既存チャンプに対する新鮮な意見を目にしてるけど好評な奴はちゃんと好評で驚く
逆に不満が続出するチャンプはまあそういうことなんやろなって
>意味不明な怪物が出来上がってしまった。
ここ草
僕はAugust君が好きです
ウディアおめでとう!!
zeno以外ブッ壊れ量産機やないか….