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【LoL】2026年LCK勢力図はこうなる 識者CloudTemplerが斬るティアリストと戦力評価

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2026年LCKはもう答えが出ている? ビッグ3とその他7チームの勢力図

GenG・HLE・T1が並び立つビッグ3、経験値で一歩抜けたKT、減量ロスターで再出発するDK、そして成長株や再建組がひしめく残りの7チーム。LCKのご意見番CloudTemplerが、2026年シーズン開幕前の戦力評価とティア構造を、ロスターとスタイルの両面から徹底的に言語化。その一部を紹介。

ティアリスト

最上位グループ
Gen.G、HLE、T1

中位グループ
KT
DK、NS、BFX、DNF

下位グループ
DRX、BRO

Gen.G – Kiin / Canyon / Chovy / Ruler / Duro / Ryu

  • GenGは2025年からロスター据え置き。変化はヘッドコーチがKimからRyuに代わった点だけ。2025年は一年を通して強かったが、Worldsで敗退。その結果を受けたリセットとしてのコーチ交代と見られる。
  • Ryuは限られた戦力でもチームカラーを作り、結果を出してきたコーチとして高評価。だが仕事の多くは外から見えないため、「Kimより上」とは断言しづらい。現時点では、期待値の高い新指揮官という位置づけにとどまる。
  • GenGはドラフトや大一番で総合力頼みになりがちなイメージを抱えたままWorldsでつまずいた。選手主導のドラフトの中で、Ryuが要所でどこまでNOと言えるかが焦点。2025年の敗北感を引きずらず、2026年に向けて頭をリセットできるかどうかが最大のテーマになる。

Gen.Gは2025年からスタメンがそのまま維持されたロスターだから、正直いちばん語ることが少ないチームでもある。変わったのはコーチングスタッフで、Ryuがヘッドコーチとして新しく入ってきた。

コーチについて、前からずっと頭の片隅にある考えがひとつある。優勝候補クラスのチームって、変化はほぼ避けられない運命みたいなものだと思っている。どの年も「結果を証明し続けろ」と求められる立場だからこそ、一定のラインを割った瞬間に、何かしらの変化が起きやすい。

Gen.Gの2025年を振り返ると、間違いなく強かったし、シーズン全体として見ればすごくいい一年だった。ただ、競技シーン最大の舞台であるWorldsで敗退してしまった。その結果を受けて、コーチングスタッフに手が入った、という見方はできると思う。

Gen,Gの話は、唯一の大きな変更点であるRyuに絞って話そう。Ryuのコーチとしての評価について、韓国のインタビューや記事で語られている内容は本当に高い。今回のオフでも、かなり複数チームから狙われていたコーチのひとりだった。キャスターやアナリスト同士で話すときも、Ryuはよく名前が挙がるタイプで、「あのコーチは本当に優秀だよね」という文脈で語られることが多い。

そうなっている大きな理由のひとつが、これまでRyuが担当してきたロスターのタイプと、そのロスターで出してきた結果だと思う。LCKの中位〜下位寄りのチームって、ロスターの天井がかなりはっきりしていることが多い。どれくらいのことができるチームなのか、ある程度最初から見えてしまっているような構成のチームたちだ。

Ryuは、そういうロスターを任されることが多かったにもかかわらず、そこに明確で強いチームアイデンティティを吹き込みつつ、結果面でも最大限に引き出してきた。2025年もまさにそうで、限られたリソースで組んだロスターにもかかわらず、かなり良い結果を出している。

だから、Gen.GにRyuを据えること自体には、ポジティブな要素がたくさんあるし、流れとしても悪くないと思う。ただ、「じゃあRyuがGen.Gで何をどこまで良くできるのか」と聞かれると、コーチという役職の性質上、言い切るのがむずかしい。

個人的には、プロシーンのコーチ評価に関しては、かなり慎重派だ。理由は単純で、コーチの仕事の大部分が、外から一切見えない場所で行われているからだ。第三者の立場から、実際に何をしていて、どんな価値をチームにもたらしているのかを知る術がほぼない。

それに、「プロシーンにおける良いコーチとは何か」という問い自体にも、客観的で明確な答えが存在しない。だからどうしても、外側にいる人間は「いい結果を出したチームのコーチ=いいコーチ」という、結果ベースの判断に落ち着きがちになる。これは別に間違いとも言い切れないけれど、「あるコーチが他のコーチより優秀だ」と断定するには、材料があまりにも足りないとも思う。

ドラフトでどれだけ発言権を持っているのか、日々の業務をどれくらいのクオリティでこなしているのか、ゲームの外側でどんな役割を担っているのか。そのへんは全部裏側の話で、外には出てこない。

チャット「ロスターの期待値とか、階級を超える結果を出せるかどうかが、いいコーチの指標なんじゃない?」

そういう見方もあると思う。でも、冷静に振り返ってみると、シーズン全体のスケールで見て「明らかに期待以上の結果を残したチーム」って、実はそんなに多くない。

チャット「じゃあ、伝統的なスポーツみたいに、戦術面・戦略面での貢献は?」

LoLは、コーチ側の戦略要素がそこまで支配的なゲームではない。結局のところ、ほぼすべてがゲーム内で起きるプレイに集約される。

チャット「じゃあドラフトは?」

ドラフトも、最終的な決定権はコーチより選手側のほうが強いことがほとんどだ。程度の差こそあれ、選手の意見のほうが重く扱われる。

自分がこうやってチャットの意見をはねつけているのは、自分だけが真実を知っているからではない。ただ単に、自分にもはっきりした答えがないからだ。だからこそコーチ評価については、極端な意見をあまり言わないようにしている。

あえて自分なりの基準をひとつ挙げるなら、「新しいコーチが、前任者のときよりチームに明確なマイナスを与えていないかどうか」。まずはこれが大前提。そのうえで、選手のメンタルケアがどれだけできるか。そして、シリーズの途中など、本当に重要な場面で、ハンマーを振り下ろすように決断を押し通せるかどうか。このあたりが、自分がコーチを見るときに最低限意識しているポイントだ。

話を戻すと、Ryuについて業界内でポジティブな話がたくさん聞こえてくるのは事実だとしても、「前任のKimより明確に優れている」とか、「KimがGen.Gで大きく失敗したから交代になった」といった言い方をするのは、ちょっと違うと思っている。少なくとも自分の感覚では、「RyuはKimより上のコーチだ」といった、上下の物差しで語るのはむずかしい。

それよりは、「高い評価を受けてきたRyuが指揮するGen.Gが、2026年にどんな姿を見せるのかが楽しみ」というスタンスに近い。

ひとつだけはっきり言うと、Gen.Gはもともとドラフト面で突出したチーム、というイメージはあまりない。むしろ、ドラフトで発想を閉じてしまいがちとか、大事な場面では最終的にチームとしての総合力や階級差に頼りがち、といった印象を持たれてきたチームだと思う。

レギュラーシーズン中は、実際は色々なピックや構成を試している。自分が言っているのは、もっと「ここを落としたら終わり」という種類の試合、つまり国際大会の重要なシリーズや、負けたら敗退が決まるような試合での話だ。その局面に限って言えば、Gen.Gにそういうイメージを持つのは、正直そこまで不当ではないと思っている。

ただ、さっき自分が言った「重要な場面」という言葉は、そのままWorldsとほぼ同義だ。今年のGen.Gは、それまでの一年を通しては本当に素晴らしい成績を残していたのに、Worldsだけがうまくいかなかった。だから本気でこの部分を掘り下げようと思えば、いくらでも話は広げられる。

ただ、今日はあくまでオフシーズンとロスターの話がメインなので、この辺にしておこう。もしGen.Gが、さっき挙げたような課題を本気で解決したいと考えているなら、2026年のシーズンを通して、同じような問題がまた出てくるかどうかを注目して見たいところだ。

この文脈でいえば、ドラフトの現場で最終的な発言権を強く持つのは選手という前提がある以上、似たような状況でRyuがどこまで選手の意見をはっきり否定し、別の方向に舵を切れるか。そこをもって「Gen.Gにとっていい仕事をした」と評価される未来もありうる。

忘れてはいけないのは、プロリーグという環境では、最重要なのは常に選手だということ。資本関係とかそういう話ではなく、ゲーム内外で起きることの大半を決めているのが選手側だ、という意味で。コーチの役割と影響力は、その外側の、ごく限られた領域にとどまることが多い。

とはいえ、その小さな差が試合を分けることも確かにある。両チームともとんでもない選手を揃えているレベルになってくると、数問の差で首席と次席が決まる受験みたいな世界になる。その数問分にあたるのが、コーチがカバーする領域だとも言える。小さく見えても、その差が最終的な結果にとってはかなり大きい、みたいなね。言いたいことは伝わると思う。

Gen.Gに関していちばん大事なのは、2026年に向けて、頭をしっかりリセットすることだと思う。2025年に何がうまくいかなかったのかをきちんと整理して、2026年に向けて何をどうやっていくのかを決め直すこと。

これだけの成功を積み重ねてきて、年でいちばん大きな舞台でつまずいたロスターだからこそ、その敗北をどう消化して次につなげるかが本当に重要になる。ああいうタイミングでの敗退は、プロ選手としてのメンタルを大きく揺らしたり、ときには折ってしまうことすらあるからだ。

来年もGen.Gが強いことについて疑っている人は、ほとんどいないはずだ。だからこそ、2025年の敗北感や落差をそのまま2026年に持ち込まないこと。そこがいちばん大事なポイントだと思う。

HLE – Zeus / Kanavi / Zeka / Gumayusi / Delight / Homme

  • HLEはLCK版JDGとも言える「超クジラ」チームで、大型投資で毎年オフの主役になっている。2026年もKanavi、Gumayusi、HommeというビッグネームFAを一気に獲得した。
  • 2025年のHLEは「分厚い装甲でじわじわ押しつぶす戦車」タイプだったが、2026年版はKeSPA Cupを見るかぎり「現代戦車」寄り。序盤から前のめりで仕掛ける、スピードと機動力重視のチームに寄っている。
  • 攻撃性が増えたぶん安定感はやや落ちる可能性があるが、レーン主導を取りたがるGumayusi、序盤から攻めるKanavi、そこに既存メンバーとHommeが加わり「制御されたアグレッシブさ」を狙える形。ビッグ3の一角であり続けつつ、2026年はよりアグレッシブなHLEになるポテンシャルがある。

HLEは本当におもしろいチームだよな。ここ数年のオフシーズンでは、だいたい毎回主役ポジションにいる。LCKのJDGみたいな存在と言っていい。いわば、すでに古参の廃課金勢が山ほどいるソシャゲに、あとから参入してきた超太客、巨大なクジラみたいなチームだ。

HLEという超クジラが、すでに出来上がっていた生態系に後発で入ってきて、トップ層に割り込もうとしている。その意思表示として、ここ数年のHLEは選手獲得にガッツリお金をつぎ込んできた。だからこそ、毎年オフになるたびに一番話題をかっさらっていくんだと思う。

リーグ全体で見れば、「金で解決しないなら、もっと金を積もう」みたいなチームがいるのは、正直ありがたい話だ。最終的にリーグを回しているのは資金と投資であって、お金こそがエンジンの燃料みたいなものだからだ。逆に各チームが財布の紐を締め始めると、リーグの規模も競争力もじわじわ縮んでいく。そういう意味で、HLEみたいな存在がいるのは本当に大きい。

今回のHLEは、Peanutの抜けたジャングルにKanaviが戻ってきて、LPLに行ったViperの後釜としてGumayusiが加入した。Kanavi、Gumayusi、そしてHomme。この3人の超ビッグネームFAを、HLEは全部かっさらってきたわけだ。

さっき少し触れた「新しい選手が入ることでチームカラーやスタイルがどう変わるか」という話に戻るけれど、長い目で見れば、HLEもどこかで極端さが薄れて、単一スタイルに振り切ったチームではなくなっていくとは思う。それでも、今回の補強、とくにKanaviの加入は、HLEのスタイルを変えうる要素を持っている。

とはいえ、現時点でそれを断言するのはさすがに早いし、KeSPA Cupの結果だけで語るのも正直むずかしい。ただ、少なくともここまでのKeSPA Cupを見るかぎりでは、HLEはかなり尖った、攻撃的なチームになっている。Kanaviが入ることでそうなるだろう、という予想は多くの人が持っていたと思うけれど、その期待を軽く超えてくるレベルで、序盤から前のめりなチームになっている。

Starcraft: Brood Warで言うなら、Zerglingにムービングスピードアップグレードを入れた状態とか、Zealotに足がついた状態を想像してもらうと近いかもしれない。2025年のHLEタンクは、どちらかというと第一次世界大戦時代の戦車みたいなイメージだった。鈍重だけど装甲は分厚くて、有刺鉄線やボルトアクションライフルを持った歩兵ごと、ゆっくりひき潰して前進していく塊の鋼鉄。

2025年のHLEもそんな感じで、ゲーム全体を通してじわじわと相手をねじ伏せていくスタイルだった。選手個々のパワーが高いからこそ成立する、重戦車型のチームだ。それに対して、KeSPA Cupで見えている2026年版HLEは、現代的な主力戦車に近い。馬力のあるエンジンと柔軟なキャタピラを備えて、高速で戦場を駆け回りながら戦うタイプ。

もちろん、新しいHLEには不安定さも出てくる。前のHLEは、時間さえ稼げれば最後は勝てる、というタイプだった。必要なアイテムが揃うまで待ち、レイトゲームに入ったときに、選手の実力差で押し切る。そういう勝ち方だ。

新しいHLEは、その「ゆっくり、でも確実に」の部分を捨てて、目についた好機にはどんどん飛び込んでいくチームになっている。戦車としての分厚い装甲と守りの一部を外し、そのぶん火力と機動力を積み増した、みたいなイメージに近い。

チャット「スタークラフトの話もうやめろよおっさん。そのゲーム、もう30年近く前だぞ」

ふん。ここは韓国だから、Starcraftの比喩はまだ現役だし、かなりの人が普通に理解できる。そうやって突っ込んできたからには、むしろもう一歩スタークラフトの話を進めよう。

2025年版のHLEは、昔ながらのオールドスクールなStarcraftに近い。序盤〜中盤をすごく安定志向で進めて、攻撃と防御の3段階アップグレードが全部完成するまでひたすら待つ。そして溜め込んだリソースを一気に注ぎ込んで、人口200同士の大決戦で勝負をつける。そういう絵だ。

一方で新しいHLEは、もっと現代的なStarcraftに近い。ゲームがそんなに長くなる前に、もっと早いタイミングで仕掛けたり、前に出たりして、試合を決めにいくスタイルだ。

……よし、おっさんの思い出話はこの辺にしておこう。でも、言いたいことは伝わったと思う。さっき言った「HLEタンクが速くなった」「機動力が上がった」というのは、結局のところチームとして、以前より早いタイミングでゲームに介入していくようになった、という意味だ。

しかも、これはKanaviだけの影響ではないと思っている。今回の新生HLEには、もうひとり大きなピースとしてGumayusiが入っている。レーン主導権を取るためなら何でもやる、というタイプの選手だ。

そこに、序盤からガンガン敵陣に踏み込んでいくジャングラーKanaviが加わった。さらに、2025年の時点ですでに攻撃性を持っていた既存メンバーと組み合わせて考えると、かなり魅力的なレシピが出来上がっているように見える。その上で、Hommeという経験豊富で知識も豊かなコーチがいる。いわば「制御された攻撃性」をチームとして表現できる素材が揃っている状態だ。

この新生HLEは、見ていて間違いなく楽しいチームになると思う。しかも、その楽しさは悪い意味ではない。ちゃんとビッグ3に属していて、LCK優勝を狙えるロスターだ。そのうえで、さっき言ったように、攻撃だけに全振りした暴れ犬みたいなチームになっていくわけでもない。

仮にスタイルが変わるとしても、180度別物になるわけではない。2026年のシーズンを通して、このチームはいろいろなゲームプランやスタイルを試していくはずだ。ただ、その中でも「コントロールされた攻撃性」を発揮できるポテンシャルがある。ちゃんと訓練されたシェパード犬みたいなイメージに近いかもしれない。個人的には、その部分にいちばん期待している。

今やっているKeSPA Cupでも、その片鱗はすでに見えている。ただ、さっきも言ったように、KeSPA Cupをそのまま2026年本番の指標にするのは無理がある。サンプルが少なすぎるし、大会の性質も違う。だから「数カ月後のHLEはこういうスタイルになる」とまでは、現時点ではさすがに言い切れない。

T1 – Doran / Oner / Faker / Peyz / Keria / Kkoma・Tom

  • T1の変更点は、Gumayusiが抜けてPeyzが入ったことだけ。Peyzはデビュー当初から「キルを取り切る力」と集団戦でのスーパ―キャリーで評価されてきたADC。
  • これまでのT1は、Gumayusi・Keriaでボットレーンにほぼ毎試合のようにレーン有利を作り、そのリードを元にスノーボールするスタイルが核だった。Peyz+Keriaの新ボットが、この路線を継続するのか、それともチーム全体のスタイルを少し変えるのかが注目ポイントになる。
  • ただしT1はビッグ3の一角で、ロスター議論は「アップかダウンか」よりも「相変わらず優勝候補であり続ける」かどうかの話になる。Peyz加入後も高水準は維持される前提で、細部がどう変化するかを見るチーム。

T1は選手の入れ替えが1人だけで、Gumayusiの穴を埋める形でPeyzが加入した。今日は、LCKデビュー当時の評価と、2025年にLPLで過ごしたシーズンを踏まえて、Peyzという選手について話そうと思う。

Peyzの特徴としてデビュー当初からずっと言われているのが、「キルを取り切る力」が尋常じゃないこと。ただ、それは後ろに下がって安全圏からキルをもらうタイプ、という意味ではない。プレイ自体もかなり攻撃的なADCだ。

LCKでの最初の数年を振り返ると、Peyzは「レーンが超つよい選手」というより、「集団戦能力」と「スーパ―キャリーになる瞬間」で評価されることが多かった。レーニングがダメだったという話ではなくて、あくまで褒められていたポイントがそこに集中していた、という話だ。実際、当時のスタッツや使用チャンピオンの傾向を見ても、集団戦とキャリー力を土台にした内容になっている。

で、そのPeyzが、今度はT1に入る。T1といえば、攻撃性の高さとスノーボール型のスタイル、そしてそのスタイルを回すうえでボットレーンが果たしてきた重要な役割がセットで語られるチームだ。長年、T1のボットレーンはチームのプレイスタイルを支える柱だったわけで、そこにPeyz+Keriaという新デュオが入ってどう変化するのか、個人的にはかなり楽しみにしている。

Gumayusi+Keriaというボットレーンの強みの土台は、シンプルに「レーンで勝つ」だった。10試合あったら、そのうち9試合、少なくとも8試合はレーンフェイズで有利を作ってくれるボット。それを起点に、T1はリードを広げて試合を早い時間帯で決めていく。そういう勝ち方をしてきたチームだ。

だからこそ、いちばんの焦点はここになる。「T1はPeyzを使って、これまでと同じようなレーン主導・スノーボール型のスタイルを続けるのか」「それとも、ボットの役割を少し変えて、チーム全体のスタイルをシフトさせるのか」。このあたりが一番のクエスチョンマークになってくる。

ここで、さっきGen.GやHLEのところで話したことをもう一度強調しておきたい。選手の評価をするとき、人はどうしても主観的になりがちだし、自分に都合のいい記憶とデータだけをつまみ食いしがちだ。特に、自分が推している選手だったり、応援しているチームの選手だったりするとなおさらだ。それ自体は自然なことでもある。

でも繰り返しになるけれど、ビッグ3クラスのチームに関して、「このロスターは去年と比べてアップグレードか、ダウングレードか、サイドグレードか」を論じること自体に、あまり意味はないと自分は思っている。ここはハッキリ言い切っておきたい。

なぜわざわざ今この話をしているかというと、今年ZeusとDoranの入れ替えのときに、あまりにも極端で感情的な議論が多かったからだ。2025年の最初の数カ月間、自分は何百・何千という「ZeusじゃなくなったT1は弱くなったのか?」「DoranのHLEはどうなんだ?」みたいな質問に対して、ずっと同じことを答えていた。「そこまで大きく変わったとは思っていない」と。

もちろん、そういう議論が起きるのは分かる。T1みたいな超人気チームと、同じく優勝候補のHLEが関わる入れ替えだったからこそ、みんな気になるのは当たり前だと思う。自分がT1やHLEのファンだったとしても、ロスターが良くなったのか悪くなったのかはやっぱり気になる。

ただ、ここで重要なのは、こういう上位チームたちは「すでに実績のある強い選手たちを入れ替え続けている」という事実だ。高額な投資をして、トップレベルの選手だけをプールしているチームは、結局どの年を取っても高い水準で戦い続けるし、優勝争いから降りることはまずない。

だから、毎年オフシーズンになるたびに、こういうチームのロスターについて語ろうとすると、結論はだいたい似たようなところに落ち着いてしまう。「もともと強かったし、今年も普通に強い」。Gen.Gも、HLEも、そしてT1も、そこは共通していると思う。

KT Rolster – PerfecT / Cuzz / Bdd / Aiming / Ghost・Pollu / Score

  • KTの2026年ロスターは、紙の上の戦力だけ見ると「明確なアップグレード」とまでは言えない。ただしPerfect–Cuzz–Bddのトップサイドは、2025年を通して鍛えられ、Worlds準優勝でさらに強くなったと評価できる。
  • 新ボットのAiming–Ghost/Polluは十分「悪くない」組み合わせだが、相対的に見ると、前体制のDeokdam–PeterもKTで良いパフォーマンスを見せていた。なのでボットは「維持〜小幅な変化」程度にとどまる見立てになる。
  • トップサイド強化+ボットが最低限しっかり守れれば、KTは中位グループ内で一歩抜けた「エコノミープラス席」に座る権利があるチーム。全体としてはアップでもダウンでもないが、経験値の上乗せで微妙に得をしているロスターと言える。

ここからようやく、「このチームはオフシーズンで強くなったか、弱くなったか」という話ができるようになると思う。

KTに関して言うと、少なくとも「紙の上の戦力評価」だけ見れば、2026年ロスターはアップグレードではないと思っている。そこはハッキリそう見ている。

ただKTはおもしろくて、2025年シーズンの出来事と、Worldsファイナリストになった実績をセットで考える必要があるチームでもある。PerfecT–Cuzz–Bddのトップサイドは、2025年シーズンを通していろいろな出来事を乗り越え、そのうえでWorlds決勝まで到達したトリオだ。その経験を経て、この3人のユニットは確実に強くなったと思っている。

そのプラス分だけで、さっきの中位グループの中で、KTを他4チームより一段上の「エコノミープラス席」に置いた理由にはなる。それくらいの上乗せ効果があると思う。

総合的に見れば、2026年のKTロスターは、アップグレードでもダウングレードでもない、というのが自分の評価だ。新しいボットレーンのAiming–Ghost/Polluは、単体で見れば全然「悪くない」組み合わせだと思う。ただ、ここでも自分はあくまで相対評価で見ている。前のボットレーンだったDeokdam–Peterは、KTでかなりいいパフォーマンスを見せていたからだ。

なので、新ボットレーンがマップのボット側をちゃんと支えてくれるという前提に立つなら、「トップサイドが一段と強くなったKT」という形で、他4チームが乗っている通常エコノミー席より、ちょっとだけいい席に座る権利はあると思っている。

DK – Siwoo / Lucid / ShowMaker / Smash / Career / CvMax

  • 2026年ロスターで「減量」に振り切った。ShowMaker以外をSiwoo・Lucid・Smash・Careerの若手で固め、中途半端な勝負をやめて再スタートを選んだ形になっている。
  • 若手ロスターは博打だが、その中にLucidという「新人でもベテランでもない急成長ジャングラー」がいるのが大きい。Lucidの天井値、残り3人のポテンシャル次第では、想像以上に化ける可能性もある。
  • DKに対する世間の期待値はすでに下がっており、「優勝候補ではない」と受け入れられつつある。そのぶん思い切った編成ができたとも言え、2026年は結果だけでなく「どこまで伸びるか」を見るシーズンになる。

DK、NS、DNFあたりから、DRXやBROまでが評価のむずかしいゾーンだと思っている。ここから先はかなり主観も入るけど、自分としては、DKは今年「チームの運営方針をはっきり決めたな」と感じている。いわば、かなりストイックな減量期に入った、みたいなイメージだ。

これまでのDKは、マクロで言うと中途半端な食事制限とトレーニングを続けている、そんな状態だった。ガチガチの断食やカットをしているわけでもなく、かといってバルク期でもない。高重量だけをひたすら追う筋トレでもないし、完全に有酸素特化というわけでもない。その半端さが、ここ数年のLCK国内戦での位置づけの微妙さにつながっていたと思う。

問題は、その中途半端な食事とトレーニングでやりながら、目標として掲げていたのはパワーリフティングやボディビルの大会で優勝することだった、という点だ。さっきの例えで言えば、ボディビルの最高峰であるミスターオリンピアを本気で狙っているのに、減量でもバルクでもないよく分からないメニューを続けているジム通いの人、みたいな感じだった。

2026年のDKは、そこでようやく腹をくくって、完全な減量モードに入ったように見える。中途半端な立ち位置を捨てて、はっきりと二択のうち片方を選んだ。今までみたいな「どっちつかず」を続けても、トップレベルの競争には勝てないし、チーム運営の面でも得るものが少ない、という判断があったんだと思う。

そんな方針のもとで組まれたのが、ShowMakerというベテラン1人と、Siwoo、Lucid、Smash、Careerという若手4人のロスターだ。

この形のいいところは、2026年のDKが「負けにくい」チームになる、ということでもある。ここで言う負けは、勝敗というより期待値の話だ。若手や新人が多いロスターだと、ざっくり結果は2パターンに分かれる。

ひとつは、全部うまくハマって、若手が潜在能力を爆発させて上限値まで伸びてくるパターン。その場合は最高だ。

もうひとつは、うまくいかずに、多くの選手が持っているはずの天井やポテンシャルを発揮しきれないまま終わるパターン。でも、その場合でも「まあ新人だし、そこまで高い給料を払っているわけでもないし、もともとの期待値もそこまで高くはなかったよね」と割り切れる。

ベテランと新人を起用する際には、いつもこの二面性がついて回る。ベテランを起用する場合は「何が出てくるか大体分かっている」という安心感がある一方で、「ここからキャリア後半にかけて急激に化ける可能性は低い」という頭打ち感もある。まさに良くも悪くも実績どおり、というやつだ。

逆に新人・若手は、その逆だ。韓国では若手を起用することを「スクラッチを削る」と表現するけれど、まさにあれに近い。スクラッチくじを削っていって、当たりマスがあるかどうかを確かめていくような感じだ。

アカデミーや育成組をトップに上げて起用するのは、すでに何回か削ったときに「当たり」が出ているからこそ。でも、まだ削っていないマスがたくさん残っていて、その先に大当たりがあるのか、ハズレが続くのかは分からない。とはいえ、そもそも安く買ったスクラッチだから、外れてもそこまでショックは大きくない。1ドルや5ドルのくじを軽い気持ちで買うのに近い感覚だ。

この「ベテランは何が出るか分かっているからこそマイナスにもなりうる」「新人は何が出るか分からないからこそプラスにもなりうる」という構図が、起用方針のいちばんおもしろいところでもある。新人が大当たりで、想定していたベテランの上限を軽く超えていく可能性もあるし、逆に「未知のリスクを取るくらいなら、分かっているベテランに賭けたほうがマシ」という判断もある。

DKのロスターが「ベテランShowMaker+新人4人」という形になっているのは、たしかにリスクもある。でも、それでも「ワンチャンありそうだな」と思える一番の理由は、4人の若手の中にLucidがいるからだ。

Lucidは、2026年を迎えるにあたって、キャリア的にもゲーム内容的にもかなり独特な立ち位置にいる。新人と言うにはキャリアが進んでいるし、かといってベテランと言い切るのも違和感がある。そのうえで、プレイ内容は完全に「新人っぽくない」。主導権を握りにいく動きもできるし、それを高い精度で実行できるジャングラーだ。

そもそも、どこからが新人で、どこからがベテランなのか、その線引き自体がかなり曖昧だ。LCK3年目のLucidを「もう新人ではない」と見ることもできるし、プロキャリアの寿命が伸びた今の環境では、「3年目、場合によっては4年目まで新人扱いでもおかしくない」という見方もできる。

CLでの年数や、海外リーグでのプレイをキャリア年数に含めるかどうか、といった問題もある。個人的には、多くの人が「LCKや明確なティア1リーグでのデビューからカウントを始めるべき」と考えていると思うし、CLまで含めると新人扱いできる選手がほぼいなくなってしまう。

Lucidについては、こう言い切ってしまっていいと思う。ここ数年の韓国が輩出したジャングラーの中で、LCK基準の上限値に一番早く到達したのはLucidだ、ということ。これは事実だ。LCKに出てきたルーキージャングラーの中で、Lucidほど短期間で成長して高い天井に手をかけた選手はいない。

しかもジャングルというロールは、本来ルーキーがいきなり爆発的な成長を見せにくい関所でもある。そのポジションでこの速度で伸びた、というのはかなり特別だ。

だから自分は、DKのロスターは「ShowMaker1人+完全な新人4人」ではなく、「ShowMaker+Lucid+期待値の高い若手3人」という見方をしている。とはいえ、Showmakerが若手たちのど真ん中で、はっきりとしたベテランの柱にならなきゃいけないロスターであることも事実だ。

ShowMaker自身のプレイスキルが落ち込んでいるわけでもないし、ほかの若い選手たちもポテンシャルを感じさせるメンツが揃っている。そう考えると、十分「噛み合えば機能するロスター」だと思う。

LCKのレギュラーシーズンに限って言えば、「チームの順位はだいたいミッドレーナーの出来が決める」というのが、わりと共有されている前提だと思う。そういう意味では、DKはShowMakerがいる時点で、レギュラーシーズンを戦い抜くに足るミッドを持っているとも言える。まだまだ「格」は間違いなくある。

DKに関して大事なのは、視点と基準だと思う。ここ数年で、DKに対する期待値はだいぶ落ちた。自分自身もそうだし、多くの人が同じ感覚を持っているはずだ。「現実的に見て、もうLCK優勝候補ではないチーム」として受け入れている人も多いと思う。

2026年にここまで思い切った減量ロスターを組めたのも、その期待値が下がりきったからこそ、という側面がある。ずっと優勝争いを義務付けられているチームだったら、ここまで振り切った構成にはしづらい。

もちろん、期待値が下がるということは、それだけここ数年のDKが結果を出せていなかった、という裏返しでもある。ただ、そのおかげでDKはようやく「完全に割り切った勝負」ができるようになったとも言える。

このロスターが2026年の中で、とんでもない化け方をするかどうかは、現時点ではまったく分からない。だからこそおもしろい、とも言えるけどね。


Source: Cloudtemplar’s Review of 2026 LCK Rosters & Changes (Part 1 of 3)

 

管理忍

三者鼎立でござる。

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