KOREAZ
GOATのスピーチ – 2024 Future Dialogue for Global Innovation
Faker基調講演
皆さん、おはようございます。
私はプロゲーマーのFaker、李相赫(イ・サンヒョク)です。このような場で基調講演をすることができ、大変光栄に思います。皆さんにお会いできて嬉しいです。
正直に言うと、とても緊張しています。これほど多くの方々の前で話すのは初めてのことかもしれません。プロゲーマーとして3週間前には何万人もの観客の前でプレイしましたが、それでもこうして大勢の方々の前でスピーチをするのは、私の人生で最も緊張する瞬間の一つです。
それでも、この場に立てたことを心から嬉しく思いますし、自分がプロゲーマーとしてこのような場に立てるなんて夢にも思いませんでした。
運が良かった部分も大きいと思います。というのも、20年前にはプロゲーマーという職業は存在していませんでした。その当時は、ゲームをすることが仕事になるとは誰も想像していなかったでしょう。それでも私はこの道を選び、今こうして皆さんの前で話をしているのです。感謝と興奮で胸がいっぱいです。
今日は基調講演の原稿を用意していましたが、先ほどのスピーカーのお話を聞いていて、用意した原稿をそのまま読むよりも、自分の言葉でメッセージを伝える方が良いのではないかと思いました。なので、キーワードを元に即興でお話ししようと思います。うまく話せるか分かりませんが、最善を尽くします。
基調講演について準備している際に、「基調講演」という言葉自体にあまり馴染みがなかったため、辞書で調べてみました。その定義がとても興味深かったです。「基調講演」とは、重要な人物が、政策や方向性などの基本的な原則を提示するために行うスピーチだそうです。
しかし、ここは国会でもなければ、学会でもありません。だから、私のスピーチはその定義には当てはまらないかもしれません。今日はただ、自分の経験や物語を若い方々に共有しようと思います。私のシンプルな話が、少しでも共感やインスピレーションを与え、何か考えるきっかけになれば嬉しいです。そんな気持ちで私の話を始めます。
私は1996年に生まれました。当時からデジタル機器に馴染みがあり、4歳か5歳の頃にはゲームで遊び始めていました。当時はカセットを差し込むタイプのゲーム機が主流でした。その頃から、ゲームをすることが自分にとって本当に楽しいことであり、続けていきたいと思えるものでした。そして8歳の頃にはPCゲームの時代が訪れ、私もPCゲームを始めました。
当時のモニターは、後ろに膨らみがあって、今のような薄型ではありませんでした。私たちの世代は、日常生活の中でデジタル技術と深く関わりながら成長しました。そんな中でゲームを続けていた私は、18歳のときに学校を辞め、プロゲーマーとしての道に全力を注ぐことを決意しました。
学生時代の私は、決して勉強が得意な生徒ではありませんでした。学校から帰ると、いつもゲームばかりしていました。それが私の学生時代でした。そして、こうしてプロゲーマーとしての道を歩み始めました。このような場で自分の物語を共有できる機会をいただき、本当に感謝しています。
この道を歩み始めたとき、正直、自分が成功するとは全く思っていませんでした。ただ、一度試してみたいと思ったのです。それがとてもユニークな体験になるだろうと感じたからです。もちろん、成功すればそれは素晴らしいことですが、たとえ成功しなくても、その経験そのものが自分にとって特別なものになると思いました。それを追い求めてみたいと強く思い、1〜2年後には別の道を模索するつもりでした。そういった挑戦心や冒険心を持ってスタートしました。
私はプロゲーマーとして12年間活動してきましたが、こんなに長く続けるとは全く思っていませんでした。この挑戦心が、今の自分を形作ったのだと思います。今日皆さんにお伝えしたいメッセージのひとつは、この挑戦心と「失敗」についてです。
私は2013年にデビューし、同じ年にWorlds(リーグ・オブ・レジェンドの世界大会)で優勝しました。その後も2015年と2016年に優勝し、合計3回の世界チャンピオンになりました。
この大会は、サッカーで言うところのワールドカップのようなものです。3回も優勝したことで、「自分はプロゲーマーになるべき運命だったんだ」と思いました。「プロゲーマーになって良かった。これからも勝ち続けるだろう」と自信を持ち、何でもうまくやれると考えていました。
しかし、次にWorldsで優勝したのは2023年でした。
実に7~8年の間、優勝から遠ざかっていました。その間、多くの失敗を経験しました。もちろん失敗だけではなく、多くのことを学びましたが、常に成功できるわけではないという現実に気づきました。
失敗を繰り返す中で学んだことがあります。それは、「失敗は必ずしも悪いことではない」ということです。
私はとても負けず嫌いな性格なので、最初の頃は試合に負けると非常に腹を立てました。寮で設備を壊したりはしませんでしたが、ソファを叩いたことはあります。拳が痛くなるので、柔らかいソファを叩いてストレスを発散していました。
それくらい競争心が強かったのですが、失敗を重ねるうちに、単に競争心が強いだけでは勝利をつかめないことに気づきました。その後、自分の競争心の「トゲ」をどうやって削り落とし、自分を成長させるかを真剣に考え始めました。
こうして失敗を糧に成長する方法を模索し続けました。
プロゲーマーとして活動する中で、周りから「とても無口な人」という印象を持たれることが多かったです。特に大勢の人々の前で話すのは苦手で、チームメンバーとの会話も多くはありませんでした。しかし、プロゲーマーとして活動する中で、次第にコミュニケーションの大切さを学び、以前よりも話すようになりました。そして何より、この時間を通じて、自分自身をより深く知ることができました。
プロとして活動してきた中で学んだ最大の教訓は、「失敗の重要性」です。
プロゲーミングの世界では、常に勝ち続け、他者を凌駕することが求められます。そのため、勝つことは良いことであり、負けることは悪いことだと当然のように考えていました。以前は、失敗をただのネガティブなものとしか見ていませんでした。しかし、特にここ2〜3年で、失敗という概念そのものは一見ネガティブに思えるかもしれませんが、失敗を通じて成長し、それが自分のさらなる向上に繋がることを多く学びました。
実際、私は現在、自分が「全盛期」にいると感じています。
今年も、つい3週間前に行われたWorldsで優勝することができました。この成果の土台にあるのは失敗だと思います。もし失敗をただの失敗としか捉えていなかったら、成し遂げられなかったと思います。
今の私があるのは、過去のすべての失敗が積み重なった結果です。
失敗を単なる敗北ではなく、小さな勝利だと考えるようになりました。「失敗は成功の母」という言葉がありますが、それ以上に、失敗は成功の一部だと思います。
試合に負けたとしても、「ああ、これもまた小さな勝利だ」と考えることができるようになりました。
これが私が学んだ最大の教訓であり、大きなモチベーションになっています。
「負けてはいけない」「絶対に勝たなければならない」と考えるのではなく、ゲームそのものを楽しむことができるようになりました。
そして、今この瞬間のように、準備された原稿なしでスピーチをしている中で、うまくいったかどうかに関係なく、「これもまた小さな勝利だ」と考えられるようになったのです。挑戦を楽しむ心構えを身につけることができました。
若い皆さんにも、ぜひそのような挑戦心を持ってほしいと思います。
私が今の自分になれたのは、自分に情熱と熱意があったからだと思います。その情熱は、自分が好きなことを楽しむ喜びと、恐れを知らない心から生まれるものです。これが、今日皆さんに一番伝えたかったメッセージです。
最初の頃、たとえ他の人には分からない失敗であっても、それを恐れていました。でも今では、プロセスのすべての瞬間を楽しむようにしています。
プロゲーマーのキャリアはとても短いものです。私は12年間続けてきましたが、それはかなり珍しいことで、一般的には6~7年が平均的なキャリアの長さです。私がここまで続けてこられたのは、恐れを持たなかったからだと思います。また、私が学んだことの一つに、「学び」と「成長」が自分の人生において重要な価値であるということがあります。
プロゲーマーとして、常に勝利を求める気持ちがあります。勝つこともあれば負けることもありますが、勝利への強い渇望があれば、それを達成するのは自分だけの力ではありません。勝つためには、相手が誰なのか、相手がどんな環境で戦ってきたのかといった外部要因も関係してきます。
自分の成功や成果が、他人や外的要因によって定義されるのは好きではありませんでした。だからこそ、自分が大切にすべき価値観を持つべきだと常に信じてきました。「今日が昨日より少しでも良ければ、それで十分だ」と思うようにしています。
こうした内なるモチベーションが、私を前に進ませてくれました。
そして、これまでお話ししたこととつながりますが、私たちが持つべき重要な資質の一つは「謙虚さ」です。
謙虚であることは、自分を見下したり卑下したりすることではありません。本当に謙虚であるということは、自分がどんな人間であるか、自分の弱点が他人と比べてどうであるかを知ることだと思います。
誰にでも弱点はあります。他人を見て、自分の弱点を改善したいという気持ちを持ち、他人から学ぶことが大切です。
最近、この世界では多くの憎しみが見られます。それは非常に悲しいことです。
なぜなら、誰もがそれぞれの価値観を持っているからです。しかし、それらの価値観が必ずしも正しいとは限りません。自分の価値観が常に正しく、他人が間違っていると考えるのは間違いです。
自分の価値観が間違っている可能性を受け入れ、受け入れる心が必要です。この世界で多くの対立や憎しみが生まれるのを目にするたびに、「自分たちの持つ価値観が常に正しいわけではない」と改めて思います。だからこそ、謙虚さというのは、今の時代に必要なキーワードだと考えています。
そろそろ時間がなくなってきたようです。
先ほどお話ししたように、これが初めての経験なので、思いつくままに話をしています。
最後に強調したいのは、若い皆さんには、自分がやりたいこと、楽しめることを思い切りやってほしいということです。人生は短いのですから。
韓国では若者を19歳から34歳と定義していますが、アメリカではそれよりも短い定義になっています。どちらにしても、私たちの人生、特に青春は非常に短いものです。
恐れを持たず、他人を尊重し、自分が好きなことに取り組んでほしいと願っています。
私の基調講演はあまり論理的ではなかったかもしれません。最後まで聞いてくださりありがとうございました。
今日が皆さんにとって有意義な決断の一日となることを願っています。
本当にありがとうございました。
何度も読み返したいでござる。
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コメント
GOAT
「今日が昨日より少しでも良ければ、それで十分だ」
これFakerの自伝のタイトルにしよう
自分同い年なのに人間としての成熟度合いが違いすぎて泣けてきた
54:57あたり
お辞儀の時にマイクにメガネぶつけちゃうのかわいい
これを即興?OMG
原稿を読んでいる訳じゃないのに話の組み立てが上手すぎるだろ 読書の賜物なのか?
崇拝の時間だ
全ての道はフェイカーに通じている……!
プロゲーマーでいちばん有名な人がこの方で本当に良かった
TERACHAD
真の視界を獲得
一度も不満も言わず、負けたことのないプロがいるのだろうか
そうした失敗からも学んで成長し、今年も結果を残したからスピーチの場に呼ばれたのでは?
まあFakerなら君のようなコメントからも何かを得て成長してしまうかもしれない
良く言えば若く、悪く言えば未熟なesports業界でシーンの頂点がこの人でLOLは本当に幸せだと思う。
ペタチャドですよ彼は
禅僧かな?
マジな話、頭おかしい奴ばっかりのLoLってゲームの頂点に居るのがこれだけ理性と知性にあふれた人物ってのが不思議だ
普通の流れでいくとトランプみたいなのが相手チームを貶しながら暴れてそうなのに
その役割はT1ファンボが担ってるから
どこが全盛期なのかわからない男
FakerいなかったらeSportsの競技シーンに韓国いなかったらんじゃないのってくらいだろもう(暴論)
藤井聡太も結果ばかり追い求めると結果が出なかったときモチベーションがなくなるから結果より内容を求めていくことでそれは解決できるみたいなことを言っていたのを思い出した
ジャンルは違えどトッププレイヤーは同じ結論にたどり着くんだろうな