プロチームの勝利の方程式:勝つためにそれぞれがやるべきこととは?
皆さん、こんにちは。JustFocusです。
先日、著名ストリーマーのDay1さんによる洞察に富んだXの投稿を拝見しました。その投稿では、「コーチに本当に求められる資質とは何か」というテーマが展開されていました。
なんかコーチの心構えというか、教える側に必要な教養とか知識みたいなのを纏めてある本とかないんかな
現状コーチや先生してる神の方が参考にしてるもの、人って何か無いですか?— Day1 / 2025 🐧🏹 (@Day1week) April 25, 2025
この問いかけは、eスポーツプロチームの成功において極めて重要な要素にもかかわらず、体系的な知見や専門的な文献が驚くほど少ないのが現状です。
そこで私自身がプロシーンで培った経験と知見をもとに、「勝利を実現するチームビルディング」という視点から、各ポジションの構成員に求められる役割と資質について考察を共有したいと思います。
これからお伝えする内容が、プロを目指す選手やチーム運営に携わる方々、そして熱心なeスポーツファンの皆さんにとって、少しでも有益な視座となれば幸いです。
コーチ:チームの成功を左右する司令塔 – 良きコーチに求められる条件とは?
チームの精神的支柱であり戦術の指揮官でもあるコーチは、プロチームの成功を左右する最重要人物です。彼らのリーダーシップスタイルと選手との関係性が、チームの成長と結束を決定づけます。
リード型と討論型 – チームの成熟度に応じた2つのアプローチ
プロチームにおけるコーチは、大きく2つのタイプに分類できます。
- コーチ自身の意見を中心に進めるリード型
- コーチと選手たちの討論を中心に進める討論型
どちらが適しているかは、チームの特性によって異なります。
T1のように、選手一人ひとりがLoLに関する深い知識とプロフェッショナルなマインドセットを備えている場合は、討論型のアプローチが効果的でしょう。一方、現在のLJLのほとんどのチームには、リード型のコーチが必要だと考えられます。
リード型コーチが率いるチームでは、選手たち自身がLoLの理解を深め、プロ意識を養う途上にあることが多いです。そのため、選手間の意見対立も討論型チームよりはるかに頻繁に発生し、喧嘩や信頼崩壊につながるリスクも高くなります。
ここでリード型コーチが果たすべき最も重要な役割は、選手同士の対立ではなく、「選手対コーチ」という構図を作り、維持することです。コーチはこの責任から逃げてはなりません。
問題が発生した際には、選手同士で議論させるのではなく、「この問題について話し合うべき相手はコーチだ」と選手たちが自然に認識するような環境を作り出すことが重要です。
このようなアプローチによって初めて、チームは真のチームとして機能し、共に成長していくことができるのです。
結束を強めるコーチ、崩壊を招くコーチ、その違いとは?
リード型コーチであっても、討論型のコーチであっても、選手たちへのリスペクトを欠くことは決して許されません。
これは当たり前のこと思われるかもしれませんが、実際問題として、専門的にコーチングを学んだ人材や、プロ選手からコーチへ転向した経験者がまだ少ないため、選手と適切に接することができるコーチは限られています。
当然ながら、コーチのLoLのランクの高さがそのまま試合分析力を示すわけではありません。しかし、高いランクに達していないうえにチーム経験も乏しいアマチュア出身のコーチが少なくありません。
韓国を基準にしても、2~3年前までは選手へのリスペクトを欠き、意見を無視するようなコーチが2~3軍レベルでは20~30%ほど存在していました。自分の実力に自信がないコーチたちは保身のために政治を始める場合が多かったです。選手たちが本当に苦しむ姿をたくさん見てきました。これは想像以上の苦痛だと思います。
しかし、LoL eスポーツの歴史が積み重なるにつれて、プロ選手としての経験を持ち、確固たる指導理念を持つコーチたちがフランチャイズチームに定着してきました。
2024年頃から、KRでは先程述べたような問題のあるコーチはほぼ排除されたと感じています。
選手:チームの心臓部 – 技術だけでは通用しない!プロプレイヤーに求められる資質
プロチームの心臓部である選手たちには、個人の技術力だけでなく、チームの一員としての自覚と責任が求められます。相互信頼の構築、役割の理解、そして確固たる信念が、真の強さを生み出す源泉となります。
個人技だけではプロ失格 – 若い選手たちの未成熟さという課題
先ほど、どのようなタイプのコーチであれ「選手へのリスペクトが不可欠」と述べましたが、選手同士の間でも相互のリスペクトと信頼は極めて重要です。
チームメンバーはお互いを深く信頼し合い、その堅固な基盤の上でプレイを展開しなければなりません。「当然のことだ」と思われる方もいるでしょう。しかし、この意識を真に体現している選手はまだまだ少数派だと感じています。
特に韓国では2軍・3軍の選手たちが15〜18歳と若年層が中心であるため、日本と比較しても未熟な行動を取る選手が多く見受けられました。
あるeスポーツ研究の教授による論文では、韓国のLoLプロ選手を対象としたアンケート調査において、競技への没頭を支える要素として「集中力」「精神力」「自信」よりも、「チームの団結力」が最も重要であるという結果が示されています。
e스포츠 선수의 심리지원 요구 탐색(김용빈, 2025)
このように、チームの団結力と前向きな姿勢・思考は、チームスポーツにおいて最も価値ある要素だと私は確信しています。
もし、プロゲーマーを志している方がこの文章を読んでいるなら、プレイスキルの向上だけでなく、チームメイトへのリスペクトを最優先事項として心に留めていただきたいと思います。
コーチへの絶対的な信頼も不可欠
選手たちにとって、コーチへの絶対的な信頼は成功の鍵となります。
例えば、ドラフトの過程でコーチの決断が自分の考えと異なる場合でも、不満を口にせずその判断を信じてプレイする覚悟が求められます。
私は、あらゆるスポーツチームにおいて最も重要な要素は、やはりリスペクトと信頼だと確信しています。
もし選手が自分のチームメイトやコーチを信頼できなくなってしまったら、その集団はもはや真の「チーム」と呼べないでしょう。
選手同士が互いに高め合い、ポジティブな影響を与え合える環境づくりに向けて、すべてのプロ選手たちに真摯な努力を続けて欲しいと心から思っています。
選手のもう一つの顔:チームの中での「役割分担」
チーム内における選手たちの役割分担は、成功するための重要な要素です。効果的なチーム構成には、以下のような役割が必要不可欠です。
- インゲームリーダー :試合中の戦略的判断をリードし、瞬時の意思決定を担う
- ムードメーカー:日常生活においてチームの雰囲気を明るく保ち、精神的な支柱となる
- アウトゲームリーダー:メンバー全員を共通の目標へと導き、一体感を醸成する
こうした役割をチーム内でバランスよく担える選手たちが揃っていれば、チームのシナジーは飛躍的に高まるでしょう。
私自身の経験を少し共有させてください。
私はこれまで所属したチーム(※BCTを除く)では一貫してキャプテンを務め、インゲームリーダーとしての役割だけでなく、チームメイト全員が最後まで一つの目標に向かって邁進できるよう支えるアウトゲームリーダーとしての役割も果たしてきたと自負しています。
スタッフが担当できる領域、監督やコーチが指導できる範囲、そして選手同士でしか支え合えない部分—これらはそれぞれが異なる次元に存在すると考えています。
だからこそ、選手自身が「互いに支え合うパートナー」であり続けることが、チームの真の強さを形成する核心となります。
サブメンバー – 戦力を底上げするバックアッパー
サブメンバー(控え選手)は、「なぜ自分が起用されないのか」という嫉妬や不満にとらわれるのではなく、チームの判断次第でいつでもレギュラーに抜擢される可能性があるという意識を常に持ち、どんな瞬間でも試合に出場できる準備を怠らない存在であるべきです。
もし私がLJL Igniteにてチームを設立する機会を得ていたならば、15〜16歳の若手サブメンバーも積極的に起用する計画を立てていました。
元T1、現HLEの名選手であるZeus選手も、プロを志す若い選手たちへのインタビューで「弱小チームのレギュラーになるよりも、強豪チームのサブポジションで多くを吸収する方が長期的な成長につながる」と述べています。この考え方には私も深く共感します。
だからこそ、若手選手たちには、トップチームの試合を間近で観察し、学びを得ながら成長してほしいと願っています。サブメンバーであっても、チームの重要な一員であることを自覚し、自己研鑽に集中することが、将来の飛躍につながるのです。
アナリスト – コーチの右腕となる分析官
アナリストの主要な責務はメインコーチと緊密に連携し、意思決定に必要なデータと分析情報を提供することにあります。データアナリストは基本的に選手と直接的なコミュニケーションをとらないのが一般的です。
アナリストの仕事は単純な勝率データの収集にとどまらず、例えば以下のような高度な分析が求められます。
- 戦略的なスカウティングデータ(PR:選手の技量を数値化した指標、FPSゲームにおけるファーストショット成功率、ファーストキル頻度、クラッチシチュエーションでの勝率など)
- 対戦相手に関する詳細情報(バンピック傾向、個々の選手の行動パターン、敵チームのワード設置分布図、敵ジャングラーの移動経路、オブジェクト優先度データなど)
つまり、より実践的で戦術に直結するデータを集約・分析することが現代のアナリストには期待されています。
技術発展により、従来はサッカーなどの伝統的スポーツで活用されていた選手動作の自動トラッキングシステムがeスポーツ分野にも応用されるようになりました。その具体例として以下が挙げられます。
- イニシエートシーンやソロキルシーンを自動的に収集・分類するシステム
- 選手のマウス操作パターンを詳細に解析する技術
などの革新的な取り組みが進展しています。
さらに注目すべきは、韓国の名門・延世大学校のeスポーツ研究室で行われているTRAP(Tracking、Reacting、Anticipating、Pointing)テストです。
このテストでは、これらの要素が選手の実力やランク到達度にどの程度の影響を与えるかを科学的に分析する先進的な研究が進められています。
このように、現代のアナリストには単なる表面的なゲームデータを超えて、チームの戦術的成長と進化に直結する専門的かつ実用的なデータをメインコーチに提供することが核心的な役割となっています。
マネージャー – 勝利を支える縁の下の力持ち
マネージャーは、一般に認知されている役割を担いつつも、その本質的な価値はさらに深いところにあります。
特に重要なのは、選手たちとコーチングスタッフが外部の雑務や問題に煩わされることなく、純粋に競技力向上と試合に集中できる環境を整備することです。
私は、チーム組織において重要でないメンバーは一人も存在しないという強い信念を持っています。
この機会を借りて、すべてのマネージャー、そして陰ながらチームを支え続けてくださるフロントスタッフの皆様に、心からの感謝と敬意を表したいと思います。
彼らの献身的なサポートがあってこそ、私たちプレイヤーは最高のパフォーマンスを発揮することができるのです。
メンタルコーチ – 現代のeスポーツシーンに最も求められる役割
私がこのeスポーツ界で最も不可欠だと確信している役割、それがメンタルコーチ(心理専門家)です。
あらゆるスポーツでメンタル面が重要なのは自明ですが、LoLという競技は従来の身体スポーツと異なり、精神力に圧倒的に依存する側面が強いため、心理的要因が選手のパフォーマンスを決定づける核心的要素となっています。
筋肉を計画的に鍛錬するのと同様に、精神力も適切な方法で強化する必要があります。
重要な試合を前にすると、選手たちは多くの場合緊張状態に陥ります。例えば、
- 「必ず勝たなければならない」
- 「確実にスコアを重ねなければならない」
- 「絶対に負けるわけにはいかない」
といった、自分ではコントロールできない未来の結果に意識が過度に向いてしまうことにあります。
しかし、選手たちはこの意識の方向性を転換する必要があります。
「今この瞬間、試合で自分が遂行すべき役割と責務」に焦点を当て、緊張や不安を自然な感情として受容しながら、現在のプレイに意識を集中(Just Focus)させなければなりません。
また、興味深いことに、適度な緊張感は実際にパフォーマンスを最適化する効果をもたらします。
専門的なメンタルコーチの指導を通じて、選手たちは自身の潜在能力を最大限に引き出し、卓越した競技力を発揮できるのです。
まとめ – 目標に向かって燃える集団をつくることが重要
私の経験から導き出したチームにとって最も本質的な価値は、次の要素に集約されます。
- 選手とコーチの間の揺るぎない信頼関係
- 選手同士の深い相互信頼
- マネージャーをはじめとする支援スタッフの献身的なバックアップ
この三位一体の関係性こそが、どんな困難にも打ち勝つチームの基盤となります。
そして、コーチに課せられた最も重要な使命は、様々な個性と才能を持つ選手たちを一つの明確な目標に向かって結束させ、導くことにあります。
一方、マネージャーなどのサポートスタッフの核心的役割は、コーチと選手が外部の煩わしさから解放され、純粋に競技と向き合い、最大限の実力を発揮できる環境を整えることです。
この信頼、方向性、そして支援体制が完璧に調和したとき、チームは真の潜在能力を開花させ、輝かしい結果を生み出すことができるのです。
拙い文章ですが、最後までお読みいただきありがとうございました。
LJLの発展のために、これからも全力を尽くします。
今を生きるでござる。
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