パイセンの作文
- ファンに囲まれることが多くなった今、名声が必ずしも良いものだとは思いません。しかし、ファンと一緒に写真を撮ったり、サインを求められるたびに、親切であることがいかに大切かを思い出します。これは、eスポーツシーンにいるときだけでなく、その後の人生でも私が大切にしていくものです。
- 20年後、eスポーツは今では想像もできないほど成長し、より多くのプレイヤー、視聴者、大きなアリーナが世界中に広がっているでしょう。もしかすると、その頃にはアメリカのチームがようやくWorldsを制するかもしれませんね。
- リーグ・オブ・レジェンドにおいて自分が優れている理由についてよく考えますが、一番うまく説明できるのは、計算と直感を基にプレイスタイルを構築しているからだと思います。私は常に新しいことを学んでいます。出来事を予測し、他の誰よりも早く正しい場所にいて、正しいプレイをすることができるのです。
- これからの人たちが「Fakerみたいになりたい」と思ってくれるなら、私は最高のお手本になるために全力を尽くします。
- しばらくの間、自分の直感が鈍っているように感じていて、回復できるか心配でした。でも今では、永遠にプレイし続けられる気がします。今年の初め頃は、頂点から落ちていくのではないか、他のプレイヤーが私を超えていくという周囲の声が正しかったのではないかという恐怖がありました。でも、もうその心配はありません。
全文
私の名前はイ・サンヒョク(이상혁, Lee Sang-hyeok)です。
アメリカのファンは私を「神」と呼び、韓国のファンは「Unkillable Damon King(不死の魔王)」と呼びます。実は、「神」と呼ばれる方が好きです。なんとなく、少しだけ上の存在に感じられるからです。
ゲーム内では、単に「Faker」です。私は20歳で、世界で最も優れたリーグ・オブ・レジェンドのプレイヤーです。
私の両親は、私が8歳の時に初めてパソコンを買ってくれました。私はそれ以前から他の子供たちと同じようにゲームに夢中でした。プレイステーションみたいなコンソールで遊び、カートリッジに息を吹きかけて起動させたり、友達と一緒に『ドラゴンボールZ』のゲームで対戦した記憶が今でも残っています。
子供の頃は、競技としてゲームをプレイすることに興味はありませんでした。満員のアリーナで何千人もの観客の前でプレイし、さらに何百万人もの人々がオンラインで観ているという状況は、当時の自分には想像もできませんでした。
2011年、中学生の時にリーグ・オブ・レジェンドに出会いました。すぐにハマったと言ってもいいでしょう。小さい頃はスタークラフトの競技シーンを見ていましたが、特にeスポーツ選手に憧れたことはありませんでした。
でも、リーグ・オブ・レジェンドのプロシーンが始まった頃、元EDGのミッドレーナーであるHooNのプレイを研究しはじめました。
私はHooNの書いたライズのガイド記事を読み、そのことが私をプロへの道へと導きました。その後、腕前を上げ、レベル30に達した頃には韓国のトッププレイヤーたちとマッチするようになり、アマチュアでありながらも勝ち続け、最終的にはサーバーランキングで1位の座を獲得しました。
2013年にSK Telecomと契約を結ぶとき、特に両親には相談しませんでした。実際、プロゲーマーになることについて両親と話し合ったことは一度もありません。真剣にやれば成功できるかもしれないといった程度のニュアンスを伝えていただけです。
両親は積極的に応援してくれたわけではありませんが、自分の夢を追いかける自由を与えてくれました。eスポーツは非常に不安定な業界であるため、両親が心配するのは無理もありません。でも、今のところはうまくいっていると思います。
正直に言いましょう。
2016年のWorldsの準決勝で、ROX Tigersが第3試合を圧倒的に勝利して、私たちを2-1の状況に追い込んだ時、一瞬「このシリーズ、もしかしたら負けるかもしれない」と思いました。
私は試合中に感情を表に出さないようにしています。そして、チームメイトにも同じことを求めています。冷静に、無表情を保ち、先走らないように全力を尽くしています。
これまでにも同じような状況を経験してきたことを思い出しました。2013年のOGNサマー決勝では、KTR Bulletsに0-2で追い込まれましたが、その後3試合連続で勝利し、逆転優勝しました。
リーグ・オブ・レジェンドでは、ほんの数回のビッグプレイで不安を払拭することができます。だからこそ、ROXに第3試合で圧倒的にやられてしまったとき、少し不安を感じたものの、冷静さを保てばすぐに状況を好転させられるとも分かっていました。
年間を通していくつかの小さな大会がありますが、やはりWorldsが私たち全員の目指す場所です。
優勝カップには金箔が施され、何百万ドルもの賞金がかかっています。eスポーツで、これ以上の栄誉や報酬を得られる大会はありません。私のチームは過去に二度、Worldsで優勝しました。2013年と2015年です。今年も優勝すれば、私がプロとして過ごした4年間で3回目のチャンピオンとなります。
勝てる時にできるだけ多くの勝利を収めることは重要です。
いつキャリアが終わるか分かりません。多くの才能ある選手が頂点に立った後、すぐに燃え尽きるのを見てきました。誰もがあなたの座を狙っているのです。
ROXに負け始めた時、観客がSmebやPeanutに対して大きな声援を送っているのに気付きました。彼らは素晴らしい選手であり、その称賛に値します。
でも、正直言って、腹が立ちました。
傲慢に聞こえるかもしれませんが、私は自分の実力に自信があります。自分よりも格下の選手に負けると、怒りが湧いてきます。そのシリーズの最後の2試合では、怒りに任せてプレイしている私の姿を見ることができたでしょう。
第4試合では、私たちは圧倒的なパフォーマンスで巻き返しました。
Bengiが裏からKuroを仕留めた瞬間、勝利を確信しました。
私はSKTに入った時からBengiと一緒にプレイしていて、この試合は彼のキャリアでも最高の試合の一つでした。バロンを獲得し、トップレーンで敵チームを一掃した時点で、試合はほぼ終わったようなものでした。
第5試合の前、ロッカールームの雰囲気はとても落ち着いていました。私たちは戦略を確認し、私はチョコレートバーを食べました。
そして1時間後、私たちは3度目のWorlds決勝進出を祝っていました。
自分よりも実力が下だと思う選手に負けると、私は腹が立ちます。
そのシリーズの最後の2試合では、怒った時の私のプレイを見たかもしれませんね。
SKTと契約してからほんの数ヶ月後、ロサンゼルスのSTAPLESセンターで初めてWorldsに出場したことを振り返ると、なんだか面白いなって思います。
ファンの前で優勝トロフィーを掲げた瞬間は、私のキャリアにおけるハイライトです。韓国以外でも自分のことを知ってくれている人がいるんだ、と初めて実感した瞬間でした。
PCの前に座った時、韓国以外のファンが驚くほど熱狂的で、声を出して応援してくれることに感動しました。2014年のオールスター大会で、パリのアリーナにいた大勢の観客が私のために「ハッピーバースデー」を歌ってくれたことは、特に思い出深い出来事のひとつです。
はじめの頃は、観客の熱気に少し圧倒されていましたが、今ではその雰囲気を楽しんでいます。それこそがeスポーツシーンを素晴らしくしている要素です。プロゲーマーを目指すなら、騒がしい環境にも対応できる必要があります。数年前の私とは違い、今ではステージのライトの下が自分の居場所です。
キャリアが軌道に乗り始めた時、名声とはどんなものなんだろうかとあれこれ想像していました。
ファンに囲まれることが多くなった今、名声が必ずしも良いものだとは思いません。しかし、ファンと一緒に写真を撮ったり、サインを求められるたびに、親切であることがいかに大切かを思い出します。これは、eスポーツシーンにいるときだけでなく、その後の人生でも私が大切にしていくものです。
私が一生リーグ・オブ・レジェンドに関わり続けるのかというと、それは分かりません。やりたいことはたくさんあります。eスポーツのキャリアが終わったら、学校に戻って科学を勉強しようと考えたこともあります。物理や化学には昔から興味がありましたが、最近では神経科学に興味が湧いています。
20年後、eスポーツは今では想像もできないほど成長し、より多くのプレイヤー、視聴者、大きなアリーナが世界中に広がっているでしょう。もしかすると、その頃にはアメリカのチームがようやくWorldsを制するかもしれませんね。
その時、私はどこにいるのでしょうか? もしかしたらまだLoLに関わっているかもしれませんし、全く別のことをしているかもしれません。
私もチームメイトも、みんな普通の人たちです。私はテイラー・スウィフトが好きで、オフの日には時々ウォークラフトIIIをプレイします(ちなみに、私はチームで、いや世界で一番のウォークラフトプレイヤーです)。
正直に言うと、私が本当に気にかけているのは、皆さんが私の輝いていた時代を思い出して、良い思い出として語ってくれることです。
これからの人たちが「Fakerみたいになりたい」と思ってくれるなら、私は最高のお手本になるために全力を尽くします。
今週末、私たちは再びSTAPLESセンターに戻り、Sumsung GalaxyとWorldsの決勝で対戦します。いつも通り、勝利を期待しています。
SKTでの時間は本当に素晴らしい旅路でした。そのすべての日々に感謝しています。
今年の初め、私は自分の力が徐々に衰えているのを感じました。腕前が落ち、他のプレイヤーが自分に追いついてきているように思えたのです。
リーグ・オブ・レジェンドにおいて自分が優れている理由についてよく考えますが、一番うまく説明できるのは、計算と直感を基にプレイスタイルを構築しているからだと思います。私は常に新しいことを学んでいます。出来事を予測し、他の誰よりも早く正しい場所にいて、正しいプレイをすることができるのです。
しばらくの間、自分の直感が鈍っているように感じていて、回復できるか心配でした。でも今では、永遠にプレイし続けられる気がします。今年の初め頃は、頂点から落ちていくのではないか、他のプレイヤーが私を超えていくという周囲の声が正しかったのではないかという恐怖がありました。
でも、もうその心配はありません。
反応
- >もしかすると、その頃にはアメリカのチームがようやくWorldsを制するかもしれませんね。
Fakerも冗談を言うんだな。- 読んでて、苦しくて笑ってしまった。
- FakerがLoLの顔だなんて、本当にRiotはラッキーだったな。Fakerが望む限り長く現役でいられますように。余談だけど、Fakerの影でプレーしていたと語るEasyhoonの記事(英語)はめっちゃエモくて深い内容だった。どっちも歳の割にかなり大人だよね。
- まぁインタビューしたライターが書いてるからな。ゴーストライター的に。
- そうだね。Fakerは英語がペラペラじゃないから、他の誰かが書いたんだな。
でも、Fakerは10年以上スポットライトを浴びてるし、記事の通りの人物だって思うし、作り物って感じじゃなくてFaker本人そのものだと思うんだよね。
- そうだね。Fakerは英語がペラペラじゃないから、他の誰かが書いたんだな。
- Fakerは「アメリカが20年以内に世界大会で優勝する」って言った。まだ8年しか経ってない。これは別にFakerが間違ったんじゃなくて、「NAがあと12年で優勝する」ってFakerが約束してるんだと思ってる。Fakerを疑ったら後悔するぜ。
- 2023年のWorldsのLPLキャスター、WangDuoDuoの締めの言葉ね。
「私たちがFakerを尊敬している理由は、たくさんのサモナーズカップを掲げたからではなく、才能ある選手が次々と現れては消えていく中、ずっと立ち続けているからだ。Fakerはまるでひたむきな孤高の探求者のよう。他の選手たちが山を登ろうとしては最終的に去っていくのをずっと見守っている。振り返ると、Fakerはいつもそこにいる。Fakerの揺るぎない立ち姿は、もはやその山の一部なんだ」
- スター選手はいる。まともな良い人格を持つ人たちもいる。
でも、その両方を兼ね備えた人に出会うことはそう多くない。でも、もしそんな人に出会えたら、それは本当に感謝すべきことだ。人生では、どちらか一方だけしか得られないことが多すぎるからね。
- Faker……なんてチャドなんだ。
おまけ:Worlds2016準決勝 SKT T1 対 ROX Tigers(今見ても超面白いので是非)
Source: It’s been almost 8 years since faker wrote ‘Unkillable’, and It aged well
名文でござる。
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コメント
>これからの人たちが「Fakerみたいになりたい」と思ってくれるなら、私は最高のお手本になるために全力を尽くします。
Fakerがトップで良かったと思える理由がここにある…
あんたがLOLのプロで良かった×∞
lolのプロシーンがここまで盛り上がってるのは間違いなくfakerのおかげだよなー
チャドの解説助かる
Easyhoonの記事も読んできたけど、いいな……
結果出せども人はFakerを望む。
でもそれでFakerやファンを妬まず、逆にそのプレッシャーを想像して理解できるEasyhoonが好きだよ。
本名イジフンからのサモナーネームEasyhoonのセンスよ
実際Fakerのおかげで収益が保たれてる。それぐらいマネタイズに貢献してる。
Riotは韓国の方角に足を向けて寝られないくらい貢献してる
チャドの意味忘れかけてたからリマインド助かる
あまりにもGOAT
自分が競技シーンを見始めたのが2017年からであの最後からずっとFakerを応援し続けていた
昨年一番見たかった光景を見せてくれて本当に感謝している
チャドとは、20代から30代前半でシングルで都会風のアメリカ人男性のこと。転じて、真にイケてるトップクラスの男性を指すことがある。
これやるのひさしぶりじゃない?
その頃RiotはFakerを利用して6万のスキンを売りつけていたのであった